トップメッセージ

取締役社長伊勢清貴

これから50年、100年と
成長できる企業基盤の構築をめざして

アイシングループは、高い技術開発力、圧倒的なものづくり力、
グループの総合力によって自動車業界の発展に貢献してきました。
しかしながら現在、自動車業界は、電動化、自動運転の進展など
100年に一度の大変革期にあり、その構造を大きく変貌させようとしています。
私たちも自らを変え、新しいアイシングループとしてこの大変革期を乗り越えなくてはなりません。
アイシングループの持続的成長に向けた取り組みをご紹介します。

「品質至上」を基本に

 私たちアイシングループは、「品質至上」を経営理念の基本に据え、お客様に喜ばれる魅力あるものづくりに取り組んできました。「品質至上」は私たちの事業の根幹をなすものであり、ものづくりの基本となる理念です。しかしながら、価値観が多様化する現代、お 客様の求める品質のレベル、内容は千差万別です。私たちは、お客様一人ひとりと真剣に向き合い、お客様が本当に欲する品質を提供していく必要があります。私はこのような視点で、この経営理念に向き合い、経営のベースとしていきたいと考えています。

100年に一度の大変革期を乗り越えるため、自らを変える

激変する外部環境

 現在、自動車業界は100年に一度の大変革期にあると言われています。世界各国の燃費・排ガス規制強化とそれを受けた自動車の電動化に加え、コンピューター、画像処理、人工知能などのめざましい進歩により自動運転の技術が急速に進化しています。また、これらを得意とする電機やITなど異業種企業が自動車業界へ続々と参入し、かつてない激しい競争が繰り広げられようとしています。加えて技術革新の波は人々の価値観にまで影響を及ぼし、カーシェアリングに代表されるように、自動車については「所有」から「利用」へ捉え方の変化も起きています。このような新たな技術領域を自動車業界ではCASEと呼んでいますが、私たちもCASEの時代に向け、自らのあり方を早急に変えていく必要があります。

危機感の共有と3つの行動指針

 役員、従業員一人ひとりがこの大変革期を正しく認識し、健全な危機感のもと、仕事のやり方を大きく変えていくことを目的に、私はグループ全体で持つべき共通のフィロソフィーとして、3つの行動指針を定めました。
 行動指針の1つめは、「主体性とスピード」です。一人ひとりが受け身の姿勢で待つのではなく、「自分」を主語に能動的に動くこと、そしてそのスピードを加速することです。
 2つめは、「聖域なき仕事のスクラップ&ビルド」です。リソーセスが有限である以上、選択と集中は欠かせません。過去アイシングループの発展に貢献した事業であっても、競争力を失い、市場での成長が見込めないのであれば、すばやい判断によりスクラップし、リソーセスを強化すべき領域へシフトしていく必要があります。これは個々の業務においても同じであり、やるべき仕事の優先順位を決め、優先順位の低い仕事をスクラップし、自分が今本当にやるべき仕事にシフトしていかなくてはなりません。

 そして3つめは、「あらゆる壁を打ち破る」です。これまで、アイシングループは専門性とスピードの追求を目的に、分社経営を進めてきましたが、企業規模の拡大に伴い、グループ間の連携不足や事業部門、経営管理部門の重複という課題が顕在化してきました。この課題を解決するため、2017年4月よりグループ各社が持つ同様の事業領域を、あたかもひとつの会社であるかのように運営するバーチャルカンパニー(VC)制を導入しましたが、今後はVC制の枠にとどまらず、グループ連携をさらに加速していきます。
 私は2018年6月に取締役社長に就任して以来、大変革期に対する危機感と行動指針を全従業員に繰り返し説明し、理解を促してきました。今後、変化の時代を生き抜くためには、スピード感を持って構造改革を成し遂げなければなりません。そして変革を進めるためには、何よりも社員の意識改革が不可欠です。私はそうした社風を浸透させ、持続的に成長していける会社、そして新たな価値を提案できる元気な会社をめざしていきたいと考えています。
 このような状況の中、私たちは自らの将来に向けた技術開発と先行投資を一層加速させなければ、この大変革期を生き残ることはできません。しかしながら、アイシングループの収益力は、他のメガサプライヤーと比較してまだまだ弱く、次世代技術開発に十分なリソーセスを投入できていないという大きな課題もあります。
 私たちには、アイシンならではの3つの強み、すなわち高い「技術開発力」、圧倒的な「ものづくり力(生産技術力)」、「グループの総合力(幅広い事業領域)」があります。これらを強化し、課題の解決に向けて、2つの変革を推進しています。

2つの変革を着実に進め、持続的な成長をめざす

近年アイシングループは、オートマチックトランスミッション(AT)など主力商品の需要拡大により、好調な業績を維持してきましたが、この大変革期にあって、右肩上がりの業績は長期的に続くものではなく、実際に2018年度は、中国市場の落ち込みという要因もあり減益となりました。2019年度も厳しい状況は変わらず、2期連続の減益となる見込みです。また、パワートレインの電動化がさらに進めば、今後ATの需要が戻らないリスクも考えられます。

CASEに対応する企業構造への変革

 アイシングループは約3万点と言われる自動車部品のうち、約1万〜1万5,000点を担う事業領域の広さを強みとしています。これまで蓄積してきた優れた基本技術と、品質へのこだわりをベースに、CASEの時代に必要とされる商品の開発を大幅に強化していきます。
 電動化に向けては、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、燃料電池車などあらゆる電動化車両に向け、開発を進めています。ATをはじめとした様々な商品でこれまで培った技術力をもとに、1モーターHVトランスミッション、2モーターHVトランスミッション、eAxleシリーズなど電動駆動モジュールのほか、電動ポンプや電子制御ブレーキシステムといったクルマの電動化に対応する商品の開発を強化、加速していきます。
 また、開発、販売、生産体制の強化にも積極的に取り組んでいます。2019年4月、eAxleをはじめとする電動駆動モジュールの拡販に向け、株式会社デンソーと合弁で株式会社BluE Nexus(ブルーイーネクサス)を設立しました。加えて、パワートレイン事業の全体最適や電動化対応に向けた効率化を狙いに、2019年4月、アイシン・エィ・ダブリュとアイシン・エーアイを経営統合しました。
 自動運転に関しては、車両運動統合制御、電子制御ブレーキシステム、ドライバーモニターシステム、駐車支援システム、自動バレー駐車と、私たちが強みを発揮できる領域が数多くあり、これらの開発にリソーセスを集中しています。
 さらに、今後の大きな市場変化を促すとされるコネクティッド、シェアード/サービスの分野ではシェアユーザーのニーズに応えるパワースライドドアなどの車体部品や見守り安心ドア、先読みシートアレンジ、車室内監視システムなどについて、最新技術を活用しながら開発を推進しています。
 CASE商品の占める開発費比率を現状の27%から2023年度には50%程度にまで高めることを想定しており、商品ラインアップの拡充を進めていきます。
 また、あらゆる領域で自前主義にこだわらずパートナーとの技術連携を積極的に取り入れ、新規事業の開拓も加速していきます。

CASE商品へのリソーセス投入と売上拡大

高い収益力を持つ企業体質への変革

 CASEに向けた企業構造への変換には一定の時間と資金が必要です。このため、足元の既存事業については高い収益力を持つ企業体質への変革、具体的には既存事業のスクラップ&ビルドや固定費の圧縮を通じてリーンな体制を作り上げる必要があります。
 既存事業のスクラップ&ビルドについては、競争力が弱く、成長が望めない商品のスクラップを進めていきます。既に、創業期を支えたミシン事業やトヨタベッドとして立ち上げた50年以上の歴史を持つベッド事業からの撤退を決めており、自動車部品の中で赤字が続くものについても検討を進めているところです。ここから生み出される新たなリソーセスをCASE領域の開発へとシフトしていきます。
 固定費の圧縮についても、2つの視点で改革を進めています。1つは働き方改革の推進です。IoT、RPAの徹底的な活用はもちろん、従業員一人ひとりが無駄な業務はないかを見直し、大胆に仕事のやり方を変えていくことで、生産性を20%以上向上させていきます。
 2つめはこれまでアイシングループの成長を支えてきた分社経営を見直し、グループ経営に舵を切っていきます。具体的には、子会社の統合やマネジメント機能の統合を通じ、重複コストの解消とリソーセスの効率的な活用を進めます。加えて、グループ全体の経営管理や調達など本社機能を集約することで、機能強化と効率化を実現していきます。

※RPA(Robotic Process Automation):ルールエンジンや人工知能、機械学習といった高性能な認知技術を用いることによって実現する、業務の自動化や効率化に向けた取り組みやソフトウェアロボットのこと。

ミシン第1号機「HA-1」

トヨタベッド第1号「分割型ソファーベッド」

2023年度に向けた中期経営計画

 以上を踏まえ、私たちは2023年に向けた中期経営計画を策定しました。今後の市場動向予測を含め、2023年の中期経営計画のポイントを説明します。
 自動車市場は成長が鈍化しており、これまで年々増加してきた世界の自動車販売台数も2018年、2019年は減少傾向が続いています。これを受け、グループの主力事業であるAT、HVトランスミッション、eAxleなど駆動モジュールの販売について、2018年時に策定した2020年度1,300万台という計画は、3年程度遅れると予測しています。このため、販売計画の見直しを行い、2023年度1,300万台の販売目標と しました。2018年度実績(999万台)に比べ、約30%増加という高い目標ですが、新興国での新たな需要の発掘やHVトランスミッションやeAxleなど電動化商品のラインアップ拡充を進めることで対応していきます。なお、駆動モジュール販売台数のうち、電動化商品の比率は2018年度の5%から2023年度には20%以上に引き上げる計画です。
 また、研究開発費、償却費を除く固定費についても、先ほど述べた働き方改革、分社経営からグループ経営へのシフトを強力に推進し、一層の圧縮を図っていくことで、2023年度は、2019年度を下回る水準に抑えていきたいと思います。
 2018年度、2019年度は2期連続減益という厳しい状況ですが、私たちは2つの変革を着実に推進することで、2019年度をボトムに業績を回復し、2023年度には営業利益率7%、ROE12%以上をめざしていきます。

2023年度に向けた経営計画

社会に必要とされる企業グループをめざして

 2015年に国連で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されるなど、近年、国際社会では、企業による社会課題の解決に大きな期待が寄せられています。
 私たちも、このような社会からの期待を踏まえ、持続可能な社会の実現に向け、2019年5月に、社会的責任を果たしていくための行動規範「アイシングループ企業行動憲章」を改定し、「持続可能な経済成長と社会的課題の解決への貢献」「すべての人々の人権尊重」などの項目を充実しました。
 また、アイシングループは、これまで、「国際協調」「社会・自然との共生」を経営理念に掲げ、社会的要請に真摯に対応する経営を志しており、この価値観はSDGsときわめて親和性が高いと考えています。そこで、SDGsのフレームワークを経営に組み込み、2019年5月、当社グループとして注力していく7つのマテリアリティ(優先課題)を選定しました。今後、各課題の長期目標とKPIの設定を進め、事業を通じた社会課題解決に向けた取り組みの強化を図るとともに、私たちの取り組みを内外に分かりやすく伝えていきます。
 具体的な取り組みとしては、環境負荷の高い自動車に携わる企業として、今後も環境問題には力を注いでいきます。「2050年までにライフサイクルでCO2排出ゼロ」を目標に、CO2削減に貢献する商品の開発、工場におけるCO2のゼロ化に向けた革新的な設備の導入などを進めていきます。
 また、健全な発展は厳格な企業統治にあるという考えのもと、コーポレート・ガバナンスの強化にも取り組んでいます。2019年4月1日よりスピード感ある業務執行の促進を目的に、執行役員の階層と人員数をスリム化しました。また2019年6月に、取締役14名体制から9名体制に減らし、全体の3分の1以上を社外取締役としました。これにより、経営と執行の役割を明確にし、より健全で透明性の高い経営を推進していきます。

全てのステークホルダーの皆様へ

 社長就任以来、私はこれまでの「常識」や「ルール」にとらわれないマインドチェンジ、すなわち「発想の転換」によるアイシングループの革新に力を注いできました。私の使命は、自動車業界に押し寄せる100年に一度の大変革期という荒波に対し、全従業員と危機感を共有することでその危機感を変革へのエネルギーに変え、これから50年、100年と成長できる企業の基盤を築いていくことだと考えています。力強くアイシングループ全体の構造改革を進めていくとともに、ESG経営の一層の推進により、社会に必要とされる企業であり続けたいと思います。今後のアイシングループに、ぜひ、ご期待いただきたいと思います。

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