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細井広康

細井広康

#Technology

アイシンのニューモビリティプロジェクト 誰もが気軽に出かけられる社会を目指す
アイシンのパーソナルモビリティ

少子高齢化、大気汚染、地球温暖化などさまざまな課題を受け、モビリティのあり方が変わろうとしている。電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など、従来のガソリン車に変わる長距離移動用モビリティの開発は今、世界中で進められている。一方で、電車やクルマを降りてから最終目的地までの超近距離(ラストワンマイル)向けのパーソナルモビリティの開発にも注目が集まっている。そこでアイシンは、パーソナルモビリティILY-Ai(アイリーエーアイ)を開発。クルマやバイクとは違う、新たなモビリティの普及によって、社会はどう変わるのか。プロジェクトリーダーの細井広康にILY-Aiが描く未来について聞いた。

ILY-Aiのグラレコ画像

interview

Index

  • 1. 未来を拓くパーソナルモビリティILY-Ai(アイリーエーアイ)とは
  • 2. スローガンを掲げて見えた開発チームの「あるべき姿」
  • 3. 世代を超えて親しまれ人と共存するモビリティ
  • 4. ニーズを高める仕組みづくりが
    パーソナルモビリティの未来を拓く

細井広康

イノベーションセンター 主査 細井広康

ILY-Aiの説明をするイメージ画像1

1/未来を拓くパーソナルモビリティ
ILY-Ai(アイリーエーアイ)とは

アイシンが開発した近距離移動用のパーソナルモビリティ、ILY-Ai。前2輪、後1輪の3輪構造で、ステップに立って移動したり、座席に腰をかけて移動したりできるほか、ショッピングカートのように押して使うこともできる。ILY-Aiは用途に合わせてさまざまに形を変える、今までにないジャンルのモビリティだ。

また、ステップを広くすることで大人と子どもが一緒に乗れたり、座席位置を高めにすることで、乗降の際の膝や腰への負担を軽減したりと、利用者への気遣いが随所に散りばめられている。最高速度は歩く速さに合わせた時速4kmほどで、操作はいたってシンプル。世代や性別を問わず、誰もが気軽に扱える点も大きな特徴だ。開発が始まった2015年からチームのリーダーを務める細井は、ILY-Aiの強みをこう分析する。

「ILY-Aiには車体、走行安全、制御、コネクテッドなど、これまでアイシンがクルマづくりで培ってきたノウハウが詰まっています。そのうえで、一部のユーザーだけに寄り添うのではなく、誰もが快適に移動を楽しめるモビリティになるよう、性能やデザインの細部にまで気を使っています。こうした超小型EVをゼロから開発できるのはさまざまな分野の自動車部品開発を行っているアイシンならではの強みだと思っています」

2020年3月、岐阜県のショッピングモールにILY-Aiが導入され、モール内の移動用モビリティとして試験的に稼働。また、9月からは商品の自動ピックアップ、駐車場までの商品の自動運搬などの実証実験に向けた検討を開始している。さらに、2020年11月から愛知県でもショッピングカートや店内移動用モビリティとして稼働するなど、着実に活躍の幅を広げている。

時代のニーズに合わせながら
移動制約者ゼロを目指す

移動サポートの分野では常に高齢者、障がい者が注目されている。しかし、移動には疲れやすい人や、子ども連れ、荷物を持った人、けがをした人、妊婦といったさまざまな「移動制約者」たちが存在している。ILY-Aiの開発は、こうした移動制約者を含めた、誰もが気軽に出かけられる社会を目指して始まった。また、MaaSをはじめとした複合的な交通社会の中で、超近距離(ラストワンマイル)移動手段の課題に対し、自社のノウハウを最大限に活用して最適解を導き出すことも、アイシンの大きなミッションだ。
このような背景の中で誕生したILY-Aiには、人とモビリティの明るい未来への期待が込められている。

ILY-Aiの説明をするイメージ画像2

2/スローガンを掲げて見えた
開発チームの「あるべき姿」

ILY-Aiはデビュー当初から多くの注目を集めたが、稼働に至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。なにしろ、手がけようとしているのは、クルマやバイクとは違う。世の中にまだない全く新しいモビリティだ。そう簡単に正解を導き出すことはできない。

開発メンバーは毎日のように議論するが、それぞれが意見をぶつけ合うばかりでなかなか前に進まない。ときにはケンカ寸前になることもあった。それほど皆真剣だった。そんな状況を打開すべく、細井はチーム全体で一つのスローガンを掲げることに決めた。それが「でかけよう!冒険しよう!広がる世界、つながる社会」だ。

「移動に制約がある人たちが家から一歩外に踏み出すのに必要なものは何か?これまで行けなかった所や、その先にどうやったらチャレンジできるのか?そこに広がる新しい風景、出会いをどう伝えるのか?モビリティに乗る人と歩く人たちのコミュニケーションはどうあるべきか?これらの問題を解決するため、現場に行き、ユーザーを観察し、私たちのあるべき姿を徹底的に議論しました」

こうしてメンバーの足並みがそろったところで、細井たちのチームはまず簡易的な試作品をつくった。
「実際に動かしてみて、うまくいく部分もいかない部分も体感し、経験値としてサンプルを積み重ねました。また、家族、友人、知人などに実際に体感してもらい、正直に評価してもらって、目指す形を試行錯誤しながら決定してきました」

ILY-Aiの説明をするイメージ画像3

3/世代を超えて親しまれ
人と共存するモビリティ

細井は、デザインもILY-Aiに欠かすことができない要素の一つだと考えていた。もともとプロダクトデザインを専門としていた細井は、「モビリティに乗って出かけよう!」を実現するために、ユーザーに「乗ってみたい」と思わせるデザインにすることがどれほど重要であるかを認識していたからだ。
「たとえば高齢の方には、仕方なくILY-Aiに乗るのではなく、自信をもって出かけたくなるパートナーだと思ってもらいたい。しかし、それだけでは不十分です。私たちは『誰もが』乗りたいと思う、新しいパーソナルモビリティを生み出す必要があったので、デザインは既存のパーソナルモビリティでなく、年齢を問わずに親しまれている、洗練された機能美を持った家具などのデザインも参考にしました。そうしてアイシンならではのパーソナルモビリティの“理想像”を固めていったのです」

その理想像とは、人とパーソナルモビリティの共存関係を築くことにあると細井は考える。
「人は本来『自分の足で歩けるなら歩きたい』と思うものです。私たちが提供するモビリティは単に人を甘やかすだけの道具にはしたくありません。依存ではなく、あくまで共存。目指すべきは歩行制約者の方々の健康促進であり、サポートであるべきです」

ILY-Aiの説明をするイメージ画像4

4/ニーズを高める仕組みづくりが
パーソナルモビリティの未来を拓く

ただ、いくら革新的なモビリティを開発したとしても、実際に社会実装されないかぎり、社会が抱える課題の解決にはつながらない。そのために、技術だけでなく、ビジネスモデルも含めた複合的な観点から社会実装に結びつけるシナリオが必要だと細井は考える。
「ILY-Aiをはじめ、パーソナルモビリティを一人でも多くの人に使ってもらって、うれしさを感じてもらい『もっと社会全体に普及して欲しい』と声を広めていく。そうして社会に必要とされ、パーソナルモビリティのあるくらしを根付かせていくことが真の意味でSDGsの実現だと私は考えています」

モビリティ自体の進化も続く。自動ブレーキや障害物回避といった安全性能に加え、自動追走や乗り捨て後の自動帰還といった自律走行の分野において、この1,2年で多くの実証実験を行う予定だ。激動する社会のなかでアイシンの技術がどう関わっていくか、モビリティの未来を見据えた勝負はすでに始まっている。

ILY-Aiの画像

ILY-Ai
2015年に開発を始めたパーソナルモビリティ。カートになったり、子供と一緒に乗車したりとシーンに合わせた様々な使い方ができ、“移動”における多様な用途に応えます。障害物回避、自動ブレーキ、自動追従等知能化安全技術の開発も加速しています。

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