より高い静粛性を求めて新しい技術への挑戦 世界初センターピントルク受け構造への道のり より高い静粛性を求めて新しい技術への挑戦 世界初センターピントルク受け構造への道のり

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アルミ対向6ポットキャリパー開発物語 アルミ対向6ポットキャリパー開発物語

世界初の構造で制動力と静粛性を高いレベルで両立 世界初の構造で制動力と静粛性を高いレベルで両立

クルマを減速させる際、運動エネルギーを熱エネルギーに変換する。それがブレーキの役目だ。ディスクブレーキでは、車輪と共に回転するディスクローター(以下ローター)をブレーキパッド(以下パッド)で挟み込み摩擦熱に変換し、制動力を発生させる。

キャリパーは、ディスクブレーキを構成する部品のひとつであり、ローターにパッドを押し付ける役割を担う。一般的には「浮動型」、「片持ち型」と呼ばれる、ローターをまたいで片方にのみピストンが1個ないし2個配置されている、比較的廉価なタイプが広く採用されている。
それに対し、高性能車や大型車にはローターの両面にピストンを対向に配置し、1輪あたり計4~6個のピストンでパッドを押し付ける「対向型キャリパー」、「固定型」と呼ばれるタイプが採用されている。浮動型と異なり、固定されたフレーム構造である事から、軽量化や高剛性化により、限界性能での安定した制動力が得られる点がメリットだ。

2つのキャリパーの構造の違い

2つのキャリパーの構造の違い

制動のためのより高負荷な熱エネルギーを吸収するには、ローターとパッドの面積を大型化する必要があり、必然的にキャリパーの体格も大型化する。対向型キャリパーは、複数のピストンで、より効率的に均一にパッドを押し付ける事ができる事から、特に高性能車や大型車向けの大型ブレーキに適している。

アイシングループで、ブレーキシステムの開発・生産を担うアドヴィックスは、一般乗用車向けの浮動型キャリパーはもとより、「レクサス」や「メルセデス・ベンツ」などのラグジュアリーな大型車向けに対向4ポットキャリパー(ピストン4個/輪)を提供してきた。
しかし、出力500psを超える最高クラスの動力性能を備えたプレミアムスポーツカーの領域は、2010年前半のアドヴィックスにとっては未知の世界であり、会社の技術を結集した対向6ポットキャリパーの開発がスタートした。

世界初の「センターピントルク受け構造」 世界初の「センターピントルク受け構造」

プレミアムスポーツカーに相応しい、高い静粛性と制動力を備えた対向6ポットキャリパーを実現するには、従来構造では技術的に難しい事は解っていた。しかし開発メンバーには秘策があった。それが世界初の「センターピントルク受け構造」だ。

従来の対向型キャリパーの場合、パッドはキャリパー本体にピンで吊るされた状態になっており、制動時にローターの接線方向に微小に動き、キャリパー本体に当接し、制動力を受け止める。より詳しく言えば、パッドは制動する際に100μmオーダの動き代があり、ホイールの回転速度で瞬時にキャリパーに当接するため、パッドの面積が大きくなり、重くなればなるほど、打音が生じるエネルギーも大きくなる訳だ。「対向6ポットの場合、この音を消そうとしても従来構造では限界がある」と開発陣は結論づけた。

こうした課題の克服のため、開発陣は何度も議論と試行錯誤を重ね、センターピントルク受け構造を考案した。センターピントルク受け構造とは、キャリパー中央に配置した内外周2本のピンのうち、内周ピンでパッドを保持し、内周ピンを中心に、パッドを回転挙動させる世界初の構造が特徴だ。これによりパッドの運動量は、力学的に従来構造よりも約25%減り、静粛性を高めることができる。

従来のキャリパーと
新構造のキャリパーの
モデル図

従来のキャリパーと新構造のキャリパーのモデル図
▲ 制動時のパッドの動きを並進運動から回転運動にしたことにより、動きを25%抑える事ができた。
(モデル図につき、製品とはサイズ・形状が違う場合がございます。)