化学の力で立ち向かう自動車の走行安定性を高める接着剤採用までの道のり 車体剛性強化の一助となれ! 化学の力で立ち向かう自動車の走行安定性を高める接着剤採用までの道のり 車体剛性強化の一助となれ!

アイシンものづくり精神(スピリッツ)11 アイシンものづくり精神(スピリッツ)11
構造用接着剤開発物語 構造用接着剤開発物語

自動車の未来を担う新型「クラウン」にアイシンの化学製品を 自動車の未来を担う新型「クラウン」にアイシンの化学製品を

2018年6月。トヨタ自動車から「クラウン」が発売された。
「いつかはクラウン」と、愛され続けてきた名車が新時代を切り拓く本格コネクティッドカーとして大きく進化を遂げている。

2018年モデルの「クラウン」は、ドライバーズセダンとしてデザインも一新。
重量配分や慣性モーメントに徹底的にこだわった新プラットフォームをゼロから開発し、TNGAに基づく低重心パッケージを採用することで、ドライバーの意のままの走りを叶える走行安定性を実現した。

その滑らかな走りと強靭なボディを支える技術のひとつに「構造用接着剤」がある。
アイシングループ唯一の化学分野専門メーカーであるアイシン化工が開発を進めてきた製品だ。

自動車業界が探究し続ける“剛性”。接着剤は、その答えの一端を担う 自動車業界が探究し続ける“剛性”。接着剤は、その答えの一端を担う

エポキシ系樹脂を主成分とする構造用接着剤は、面と面で接合することで高い接着性と耐久性を有している。加熱することで硬化し、鋼板を強力に接着する。

走行安定性が重要視される自動車において、車体剛性は常に求められる課題だ。
車体剛性を向上する一般的な手法として、鋼材を厚くする、もしくは鋼材強度の高いものを使用するといった方法がある。
しかし、前者は車体重量が増加し、後者は複雑な鋼材加工をすることができず設計自由度が低下してしまう。

その点、構造用接着剤による面接合ならば従来のスポット溶接やレーザー溶接と併用することにより、重量を増加することなく車体剛性を高めることができる。

「溶接に取って代わるのではなく、溶接と上手く共存させることでより車体剛性が高まる」と化成品技術部部長は断言する。
しかし、その効果が認められるまでには、長い年月が必要だった。

ウエルドボンド工法

化成品への不信感を乗り越えて掴んだ、採用拡大までの道のり 化成品への不信感を乗り越えて掴んだ、採用拡大までの道のり

構造用接着剤は、十数年前からホイールアーチ部分に使用されてきた。
接着剤を使うことによりフランジ端部を短く設定でき、よりデザイン性の高い設計が可能になるからだ。

アイシン化工は構造用接着剤をPRするため、アイシン精機が主催する展示会に参加。スポット溶接のみの鋼板と構造用接着剤を併用した鋼板を用意し、その剛性を比較する展示を行った。
分かりやすい説明に、メーカーの反応も上々。しかし、返ってきた言葉は
「構造用接着剤が良いのは分かるが、耐久性や経年劣化の不安が拭えない」        


物理的に固定する溶接と比べ、化学反応を用いる接着剤への信頼はなかなか得られなかった。
接着剤を使用する箇所は、直射日光に晒されるわけではないため紫外線などの外部要因で劣化する可能性は低く、溶接との併用であれば耐久性も十分なはず。
ただ、鋼板の中で接着剤が長期間も劣化しないことや過酷な環境下での耐久性能など、物理的な証明ができず、苦悩の日々が続いた。

そんな中、時代はCO2削減がトレンドとされ、軽量化への工夫がより強く求められるようになった。
鋼板を面で強力に接着でき、重量を増加することなく車体剛性を高めることができる構造用接着剤にとって、これは採用拡大のチャンスだった。

2012年、高剛性接着剤「フェルコ7000」が完成した。従来の製品に比べて強度をさらに高めた新製品である。

その頃になると、構造用接着剤が初めてホイールアーチ部分に採用されてから10年以上が経過していた。この年月が、接着剤の有効性、剛性強化への効果を証明し、徐々にメーカーの信頼を得られるようになっていたのだ。

そして、ついに「レクサスLS600」にフェルコ7000の採用が決まった。
少量であったが、それでも嬉しかった。
「レクサスのパンフレットに構造用接着剤が掲載されていてね。そんなこと滅多にないでしょう。今でも保管してあるんです」と技術部長は嬉しそうに語る。