アイシンものづくり精神(スピリッツ)10 アイシンものづくり精神(スピリッツ)10
エンジン用ピストン開発物語 エンジン用ピストン開発物語

独自技術FSR-Kを採用採用車種は拡大へ 独自技術FSR-Kを採用採用車種は拡大へ

そこで加工担当が提案したのは、当社の独自技術FSR-Kを採用することだった。
これも従来は、熱応力と気化応力の両方がかかるディーゼルエンジンの燃焼室など、強度の欲しい特定部分に対し表面改質を行うことで、設計変更することなく強度を向上する技術だ。
さらにリング溝の強度を高めるために3つあるピストンリング用の2つめの溝にも、硬質陽極酸化処理、いわゆるアルマイト加工を施すという耐摩環との組み合わせでは前例のない試みにも挑戦している。

「形状や材質に手を加えないため、あらためて性能評価をやりなおす必要がなく、それでいて強度は約10%あがる。
コスト的にもほんの少しのアップするだけで、こうして開発の途中で出力を上げたいというときに、まさにどんぴしゃの技術だった」

レクサスNX に初採用された8AR-FTSターボエンジンは、その後、搭載車種をレクサスIS、RC、RX,GSやトヨタクラウン、ハリアーなどにも拡大している。

2017年には、いまトヨタが“もっといいクルマづくり” のコンセプトとして掲げるTNGA(Toyota New Global Architecture)を全面的に採用した新型カムリにも、この8AR-FTSで得たノウハウを活かしたアートの製品が使われている。

FSR-K FSR-K

金型から製造設備まで自前主義の強みを発揮 金型から製造設備まで自前主義の強みを発揮

もの作り企業における一般的な話として、例えば設備や金型の設計、製作を外注するケースは少なくない。
そうした中で開発リーダーは自社の強みをこう話す。

「アートの場合は金型から内製で設計できる体制をもっていて、製品のデザインができた段階で、どういうかたちで鋳造するか、肉をつけるか、社内で方案検討し、金型設計、製作、さらに鋳造設備の設計もすべて自分たちで行っていることが何よりの強みだ。
生産工程においては鋳造だけでなく熱処理や表面処理、切削などさまざまな行程を経るわけだが、なぜそうなっているのかを手の内にしていることで何か課題が発生した場合にも、外注であれば設計変更に数週間を要するところを、わずか1日でできることもある。
それは結果的にコストの抑制にもつながっているし、お客さんからも試作や変更に対する対応が早いと評価してもらっている」

そしてこう続ける。

「我々には時間やコストやさまざまな制約の中で少しでもいいものを作り、お客さまに届けている、という自負がある。
もちろん設計や生産技術など部門間で意見が食い違うことはある。
しかし、今回は激論を交わしてゴールを共有し、腹落ちした上でタッグを組んで進むことができれば、どんな困難も乗り越えられるのだということを実感した開発だった。
ピストンと一口に言っても本当に多くのバリエーションが存在し、性能の追求に終わりはなく、開発はとても大変なことには違いない。
でもだからこそ楽しいんだよね」と笑った。

自前主義の強みを発揮 自前主義の強みを発揮
▲ 当時、開発を担当したメンバー(企画・部品設計担当、鋳造・金型設計担当、熱処理や切削等の仕上げ担当)
※インタビューは2017年12月に実施