夢の駐車システムを開発せよ! 夢の駐車システムを開発せよ!

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世界初の駐車支援システム開発にアイシンの技術を 世界初の駐車支援システム開発にアイシンの技術を

車庫入れや縦列駐車を苦手とするドライバーは少なくない。
JAF(日本自動車連盟)の調査でも「車の運転で何が苦手か」というアンケートをすると、必ず上位にあがってくるのが、この車庫入れと縦列駐車だ。

このニーズを受けて、自動車メーカーはかなり昔から駐車を支援するシステムの開発に力を入れてきた。
自動車後方に障害物があると、音で警告するシステムや、後方を映すカメラの映像で駐車を補助するシステムから始まり、最近では後方だけでなく、前方や側方の視界を補助するカメラも実用化されている。

各社が独自の駐車支援システムの開発に取り組むなか、トヨタ自動車は他社に先駆けてこの駐車支援技術の高度化に取り組んできた。
00年発売のエスティマに搭載された「バックガイドモニター」では、ハンドル操作に連動した駐車ガイド線を画面上に表示する機能を付加。

01年には、縦列駐車時の適切なハンドル操作量や、切りかえしのタイミングを表示や音声で案内する機能を追加した「音声ガイド付きバックガイドモニター」を発表した。

そして03年、世界で初めて駐車時のハンドル操作を自動化したシステムを開発し、新型プリウスに搭載。
このシステムでは、車が自動でハンドル操作を行ってくれるので、ドライバーは周囲の安全確認と、ブレーキで速度調節を行うだけで駐車を完了することができる。
2代目プリウスの発売開始とともに発表されたこの新しい駐車支援システム「インテリジェントパーキングアシスト」は、その後も数々の世界初の機能が付加され、さらなる進化を遂げている。

このインテリジェントパーキングアシスト開発に、アイシン精機もトヨタ自動車と共に取り組んできた。
当社の画像処理技術が世界初の駐車支援システム開発の一翼を担っているのだ。

ハンドル操作なしで駐車できるシステムを! ハンドル操作なしで駐車できるシステムを!

「ハンドル操作なしで車庫入れができるシステムを開発したい。
協力をお願いしたいのだが…」

トヨタ自動車からこのような要請があったのは、01年初めのことだった。
実現すれば世界初のシステムである。
「まさに夢の装置!それに自分が関われるとは」

入社3年目でプロジェクトの主要メンバーとなった技術部員は、心が躍るのを抑え切れなかった。
彼はこの後、この新しい駐車支援システム開発のアイシン側の取りまとめ役となる。

トヨタ自動車からこうした依頼があったのには理由がある。
当社には、その新しいシステムの構築に不可欠な画像処理技術やシステム開発の実績があったのだ。

80年代半ばから当社は、川崎市に設立した研究所で、画像処理技術の研究・開発に取り組んでいた。
そこで蓄積された技術から製品化されたものの一つが、駐車アシストシステム(バックガイドモニター)であり、これは00年1月に発売されたトヨタ・エスティマに搭載されていた。

さらに、レーン逸脱報知システムや「フロント&サイドモニター」(運転席から見通しの悪い車前方や左側方をディスプレイに映し出すシステム)などの車両周辺監視システムをトヨタ自動車と共同で製品化していた。

これまでに蓄積された、これらの技術やノウハウを生かして、アイシンは新しい駐車支援システムのコントロールユニットの開発を担当することになった。

駐車アシストシステム

後方カメラの映像上に自車の予想進路や距離などの目安線を表示し、車庫入れや縦列駐車をする際の補助とするシステム。

駐車アシストシステム 駐車アシストシステム

レーン逸脱報知システム

後方に設置したカメラで車と車線との距離を測定。高速走行時に車が車線を越えそうになると警告音を出してドライバーに注意引足す。

レーン逸脱報知システム レーン逸脱報知システム

駐車するための「認知」「判断」「操作」、すべてを支援するシステム 駐車するための「認知」「判断」「操作」、すべてを支援するシステム

車を運転する時に人間が行う行動は、大きく「認知」「判断」「操作」の3つに分けられる。
駐車の場合も同様で、まず空いているスペースや障害物の位置関係を「認知」し、どこでどれだけハンドルを操作すればよいかなどを「判断」、そして実際にハンドルやブレーキを「操作」して駐車する。
普段はドライバーがそのすべてを行っている。

それまでの駐車アシストでは、バックカメラの映像に加え、ハンドル操作に連動した予想コースを表示したり、音声ガイドをすることで、「認知」と「判断」の部分を支援していた。
しかし、新しいシステムは、ハンドルの操作も車側で行うことで世界初の「操作」支援まで行う駐車支援システムとなるのだ。

しかし、それは到底容易なことではなかった。
駐車すべき位置を正確に認知し、刻々と変化する車の位置を検知しながら、ハンドルをスムーズに動かして駐車位置へ近づけていくこと自体、初めての挑戦である。
構造物や他の車と接触せずに、正確に駐車させる「操作」の精度が必要な上、「認知」「判断」の部分でも、今まで以上の精度が求められた。

また、システムの誤作動を防ぐのはもちろんのこと、ドライバーが誤った操作をした場合にも安全を確保できるシステムでなければならない。
そして、ドライバーにとって負担が少なく、操作が簡単で使いやすさも必要だ…。
そのすべてをクリアするシステムを開発する必要があった。

「実験室ではできるかもしれない。
しかし商品化は無理だろう」

社内から聞こえてきたのはそんな声だった。

駐車するための「認知」「判断」「操作」、すべてを支援するシステム 駐車するための「認知」「判断」「操作」、すべてを支援するシステム
車両後方についているカメラ(右)とカメラの映像(左)。
この映像を用いて、目標の駐車位置を設定し、車を正確に移動させなければならない。

乗車人数で36cmもの誤差が…駐車精度を上げろ! 乗車人数で36cmもの誤差が…駐車精度を上げろ!

新しい駐車支援システムの実現に向けての課題は山積みだった。
なかでも、最大の課題は駐車位置の精度だった。
位置の測定やハンドルの制御で少しずつ誤差が積み重なっていき、時には数十センチも駐車位置がずれてしまっていた。

どうすれば、駐車精度が上げられるか。
それにはまず、車の位置を正確に把握する必要があるのだが、これが容易ではなかった。
トヨタ自動車と当社の開発チームは頭を抱えた。

実はこの課題については、トヨタ自動車側で開発当初から取り組んでおり、駐車誤差の原因をしらみつぶしに調査していた。

アイシン側の開発チームでも、原因究明に奔走。
当社が担当している分野で、駐車誤差を生む原因の―つになっているとわかったのは、車の後ろ側を映すために使用していたCCDカメラの視点変化だった。

「人がたくさん乗っていたり、物が積まれていたりするとカメラの位置、つまり視点が変わってしまい、それが誤差につながるわけだ」

車に積載されている物の量や位置、路面の状態、タイヤの空気圧、摩耗度によって、カメラの視点が微妙に変化して、これが誤差を生むのである。
わずかなズレかもしれないが、センチ単位の精度が求められる駐車システムの場合、それが致命傷になるのだ。

実際にプリウスを使って、ドライバー一人の場合と、乗員5人の場合とを比較したところ、最大で36cmもの誤差が発生することがわかった。

「36cmも!従来のバックガイドモニターでは限界があるかもしれない」

悩んだ末に着目したのは、ヘッドライトに使われていた車高センサーだった。
車高の変化に応じて、ヘッドライトの照射角度を制御するためのセンサーだが、これを応用しようというわけだ。
車高センサーからの信号でカメラの視点の変化を補正して、目標位置の設定誤差を修正するのである。

誤差発生の原因、視点変化

乗車人数などが多くなると、車体が沈み込み、後部カメラの駐車目標の設定に誤差が生じる。

誤差発生の原因、視点変化 誤差発生の原因、視点変化