アイシンものづくり精神(スピリッツ)9 アイシンものづくり精神(スピリッツ)9
インテリジェントパーキングアシスト開発物語 インテリジェントパーキングアシスト開発物語

安全性も確保し、世界初の駐車支援システムの開発に世界成功 安全性も確保し、世界初の駐車支援システムの開発に世界成功

駐車精度課題をクリアした開発メンバーたちは、安全性を確保するためにも、工夫を凝らした。

従来の駐車支援システムのコントロールユニットには、1つのマイコンしか搭載されていなかったのに対して、今回は1つのコントロールユニットの中にメインとサブの2つのマイコンを設置することで、安全性の向上に努めたのだ。
2つのマイコンがそれぞれで行った自動操舵の計算結果が一致した場合のみ「ハンドルを切れ」と指令を送信する。
また、メインマイコンとサブマイコンは、常に互いに監視をしているので、万が一故障が起きても安全に停止できるようにした。

こうして、トヨタ自動車と共同で、システムを練り上げていき、ハンドル操作を自動化した世界初の駐車支援システム、インテリジェントパーキングアシストは製品化のめどをつけることができたのだった。

03年9月、初代インテリジェントパーキングアシストを搭載した2代目プリウスの発売が開始された。

ハイブリット車プリウスの新型とあって反響は大きく、売上も好調であったが、実はこのシステムの存在も大きかったという。

「インテリジェントパーキングアシストがクルマ選びの決め手になった」
そうしたお客様の声がディーラーから開発チームにも伝わり、メンバーはこの新しいシステムに確かな手ごたえを感じた。

初代インテリジェントパーキング
アシストの操作方法

    1
    駐車位置の真横で一旦停止後、駐車準備位置まで車両を移動させる。
    インテリジェントパーキングアシスト1 インテリジェントパーキングアシスト1
    2
    シフトレバーをリバースに入れ、駐車モード(車庫入れ/縦列)を選択すると、モニターに画像が映し出される。表示された緑の枠をタッチパネルで移動させ、駐車位置を設定する。
    インテリジェントパーキングアシスト2 インテリジェントパーキングアシスト2
    3
    「注意確認画面」を確認して「了解」パネルを押し、ブレーキを緩めるとクリープ現象により後退、自動操舵で車庫入れを開始する。駐車目標位置に到達すると支援終了。
    インテリジェントパーキングアシスト3 インテリジェントパーキングアシスト3
    3
    「注意確認画面」を確認して「了解」パネルを押し、ブレーキを緩めるとクリープ現象により後退、自動操舵で車庫入れを開始する。駐車目標位置に到達すると支援終了。
    インテリジェントパーキングアシスト4 インテリジェントパーキングアシスト4

操作時間14秒の壁を破れ 操作時間14秒の壁を破れ

しかし、開発はこれで終わったわけではなかった。

プリウスでのインテリジェントパーキングアシストのオプション装着率は85%と高く、多くのお客様に使われるなか、「使いにくい」といった声も、少なくなかったのだ。

「使いにくさ」の一番の原因は、駐車位置設定の煩わしさにあった。
初代のシステムでは、シフトレバーをリバースに入れると、モニターに駐車目標位置を表す緑の枠が表示され、ドライバーがその枠をタッチパネル上で操作して目標位置を設定するしくみだった。

最初に表示された枠の位置が、ドライバーが本当に駐車したい位置から少し離れてしまうことがあるのに加え、タッチパネルの操作も縦・横•角度の3つをそれぞれ調整せねばならず、慣れないと時間がかかってしまうのだ。
結果的に、シフトレバーをリバースに入れてから、実際に車が駐車の動作を始めるまでに平均して14秒かかっていた。

「14秒か…。
まだまだ長いな」

操作時間を短くするため、開発チームはアイシンの得意とする画像処理の技術を応用できないかと考えた。
カメラでとらえた画像の中で駐車目標位置を自動で見つけ出すことができれば、タッチパネルの操作回数も減り、操作時間を大幅に短縮できる。
そこで、後方カメラの映像から路面上の駐車区画線(白線・黄線)を検出し、駐車目標位置を自動で設定する技術の開発に取り組むことになった。

アイシンは後方カメラ映像を利用した同様のシステムとして、既に「レーン逸脱報知システム」で車と車線との距離を測定するという技術を実現していたが、これを駐車に応用するには大きな壁が待ち構えていた。

あらゆる状況で区画線を認識せよ あらゆる状況で区画線を認識せよ

後方カメラで映した画像から区画線を検出し、自動で駐車目標位置を設定する際に最大の課題となったのは、様々な状況の中で常に安定して区画線を認識することだった。

駐車場には、走行中の路面よりも、画像認識を難しくする多くの要因や様々な状況がある。
たとえば隣に停まっている車や建物の影の影響もあれば、路上の汚れで線が見えにくい場合もある。
区画線の幅、形も千差万別だ。
路上の状態によって区画線の見え方が常に変化するために、認識位置の精度・認識成功率が低下してしまうのだ。

区画線認識だけに特化して対策を練るならば、どんな状況においても区画線の認識が可能な特殊な力メラを使えばいいが、今回はそうはいかない。
区画線を認識すると同時に、カメラの映像をドライバーに見せなくてはならないからである。
カメラ側で対応できないということは、それを画像処理する側、ソフトで対応するしかない。

まず、当社とトヨタ自動車の開発メンバーたちは、駐車区画線の形状の調査にあたった。
様々な駐車区画に対応するためには、とにかくサンプルとなる映像を集めなくてはならない。

ショッピングセンター、病院、空港からパチンコ店まで、メンバーたちは実に100以上の施設に赴き、実際に車庫入れを行い、新システムに搭載するカメラを用いて画像を撮影した。

画像を撮っては社内に持ち帰り、実車を用いて実験をする。
その結果を分析して認識プログラムを改良。
また実車に搭載して試験…。
地道な作業の繰り返しで少しずつ、しかし着実に区画線の認識率は上がっていった。

そして、試行錯誤を始めてから約半年後、目標の認識率を達成。
人間の目と同等の区画線検出性能を実現した。
さらに、検出と同時に区画線が直線型なのかU字型なのかの形状の区別もできるようになっていた。

発想の転換で処理スピードも向上。操作時間は約1/3に 発想の転換で処理スピードも向上。操作時間は約1/3に

さらに、開発メンバーのこんな発想が、処理スピードの大幅な向上につながった。

「駐車しようとしてシフトレバーをリバースに入れたとき、画面全体から区画線を探していたのでは遅すぎる。
シフトレバーを操作するまでの車両の動きの情報から、画像処理を行う画面を限定することはできないか」

後退を開始する位置につくまでの車両の動きを計算することで、画面上で駐車区画が表示されるであろうおよその位置を予測。
カメラの映像の中でその部分だけを限定して処理する方式を採用したのだ。
これで処理する情報の量はおよそ10分の1となり、認識スヒードの大幅な向上だけでなく、認識ミスの減少にもつながった。

当初区画線を検出し、画面上で表示するまでに1秒以上かかっていたのが、170ミリ秒(1秒の約1/6)まで短縮することができたのだ。
普通の人間の目から見ると、シフトレバーをリバースに入れ、画面が後方映像に切り替わった瞬間には、もう駐車目標位置が表示されているということになる。

その結果、シフトレバーをリバースに入れてから後退開始までの所要時間は、14秒から5秒に短縮された。

こうして、区画線を検出し、容易に駐車目標位置を設定できるようになった第2世代のインテリジェントパーキングアシストは、その利便性、操作性を大輻に向上させることに成功した。
進化を遂げたこのシステムは05年、マイナーチェンジしたプリウスをはじめ、複数の車両にオプション設定された。

画像処理する領域を限定

画像処理する領域を限定 画像処理する領域を限定