ガスエンジン駆動式エアコン世界四大メーカーへの軌跡 ガスエンジン駆動式エアコン世界四大メーカーへの軌跡

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ガスヒートポンプ式エアコン開発物語 ガスヒートポンプ式エアコン開発物語
ガスヒートポンプ式エアコン

世界3位のガスヒートポンプ式エアコン。エネルギー事業の柱も、どん底からのスタートだった 世界3位のガスヒートポンプ式エアコン。エネルギー事業の柱も、どん底からのスタートだった

今や家庭への普及率87%(05年度)となったエアコン。
人が集まるショッピングセンターなどでは必要不可欠のものだ。
そうしたビル空調用エアコンのなかで大きな比重を占めているのが、ガスをエネルギーとしたエアコンだ。
原理はカーエアコンと同じで、エンジンでコンプレッサーを回して冷媒ガスを圧縮・膨張させ、空気を暖めたり、冷やしたりする。
正式名はガスヒートポンプ式エアコン、略してガスヒーポン、あるいはGHPと呼ばれているエアコンである。

ガスを使うため夏の電力需要のピーク時に電力を使わなくてすむし、暖房にはエンジンの排熱を利用するから効率がいい。
ランニングコストが安く、CO2の排出も少ない、いわゆる環境にやさしいエアコンなのだ。

このGHPでアイシン精機は、世界4大メーカーの一つである。
市場シェアは約23%で、世界第3位(05年)。
87年に東京ガスとの共同開発で市場に参入して以来、成長を続け、現在は当社エネルギー事業の柱となっている。
しかし、その道のりは実に苦難に満ちたものだった。
GHPの開発物語は、業界の常識を打ち破る挑戦を通じて、どん底から這い上がった軌跡だといえる。

ガスヒートポンプ式エアコン(GHP)

ガスエンジンでコンプレッサを駆動し、冷媒を循環。気化と液化を繰り返すことにより冷暖房を行ないます。

ガスヒートポンプ式エアコン(GHP) ガスヒートポンプ式エアコン(GHP)

トラブル続出、クレームの嵐。「故障の多いアイシン」と呼ばれ… トラブル続出、クレームの嵐。「故障の多いアイシン」と呼ばれ…

「ここでうちのラーメンを食ってみろ!」
ラーメン店のエアコンを修理に訪れた担当者は、店主の怒りの言葉に、40度を越す店内で、汗だくになって黙ってラーメンをすするしかなかった。
故障したGHPの修理に出かけた担当者たちは全国で同じような目に遭っていた。
頭から焼きそばや洗剤をかけられたりした者もいれば、「反省しろ」と倉庫や屋上に閉じ込められたりした者さえいた。
87年から90年にかけてのことだった。

85年、当社は東京ガスと共同でGHPの開発をスタートした。
天然ガスの利用促進を狙っていた東京ガスが、当社に共同開発を申し入れてきたのだ。

87年、他社にはない7.5馬力のGHPを開発し、3年目には年間32億円を売り上げるまでになった。

しかし、ここからが地獄だった。
納入先でトラブルが続出したのである。
原因を究明する前に次の不具合が発生するといった有様で、開発部はパニック状態。
修理などに対応するサービス部もパンク寸前だった。
当社製GHPの故障率の高さに、市場関係者から「故障の多いアイシン」という汚名を着せられるのに、そう時間はかからなかった。

「無理だ」「無謀だ」の声の中、長時間運転に耐えるコンプレッサー開発を 「無理だ」「無謀だ」の声の中、長時間運転に耐えるコンプレッサー開発を

サービス部は「とにかく現場の的確な情報を迅速に開発部門に伝えることが改善につながる」
と信じ、屈辱に耐えながらクレームの情報を開発部に伝え続けた。

一番の問題点は、コンプレッサーの故障が頻発したことだった。
運転時間が長時間に及ぶ、配管が長い、といったGHP独特の使用環境条件を満たすだけの耐久性がなかったことが原因だった。
その耐久性を早急に2万時間まで向上させなくてはならない。

開発担当はコンプレッサーメーカーヘ足を運んだ。
しかし、メーカーの反応は、「それほど厳しい負荷使用条件で2万時間を持たせるなんて我々には無理です。
アイシンさんでやっていただくしかない」
と冷たかった。
さらに「その開発は無謀だ」
「アイシンさんは余裕があるから、趣味で仕事ができてうらやましい」
などと言われるに及び、担当者の腹は決まった。
「よし、自分たちでゼロから開発をやり直そう」

回収した故障品を分解し、調べた結果わかったことは、冷凍機油がコンプレッサーにリターンしてこないことだった。
これはカーエアコンの配管の長さがせいぜい2〜3mなのに対し、GHPの場合、100m以上になることにも原因があった。
長くなるほど冷凍機油が配管の中に残され、コンプレッサーヘリターンしてこなくなる。
故障をなくすにはまずこのリターン量を測定する必要があった。

ところがこの測定がきわめて難しい。
冷凍機油は配管中を冷媒と一緒に管壁を伝って流れるが、その冷凍機油の中にも冷媒が溶け込んでしまい、ときには半分以上が冷媒のこともある。
カーエアコンで行っているような単純な液中オイル濃度測定では正確な冷凍機油の量が確認できないのである。

故障をなくすために配管内の冷凍機油のリターン率をあげろ! 故障をなくすために配管内の冷凍機油のリターン率をあげろ!

「どうすれば冷媒ガス流に混合する冷媒機油の量が測定できるだろうか」
もちろん、そんな測定機など存在しない。
それどころか、測定の方法さえ確立されていなかった。

悩んだ末に開発担当者が注目したのが、オイルセパレーター(ガスとオイルを分離する機器)だった。

「測定用のオイルセパレーター室外機を高性能にすれば冷媒とガスの混合ガスのオイルリターン量が定量的に測れるはずだ」

これが突破口となり、適正なオイルリターン量を定めることができた。
オイルリターン量を定量的に測定する測定方法と測定装置を業界で初めて確立した意義は大きく、耐久性は着実に高まっていった。

オイルリターン量の測定