燃費向上・排ガス抑制で世界市場をめざせ 燃費向上・排ガス抑制で世界市場をめざせ

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可変バルブタイミング機構開発物語 可変バルブタイミング機構開発物語
可変バルブタイミング機構

高まる環境対応ニーズ。注目のVVT開発で敗者復活を果たそう! 高まる環境対応ニーズ。注目のVVT開発で敗者復活を果たそう!

自動車開発における重要なテーマの一つに、地球環境への配慮がある。
環境保護規制は年々厳しくなっており、部品開発の分野でも環境対応へのニーズは高い。

なかでも、近年大きな注目を集めているのが可変バルブタイミング機構(VVT)である。
クルマの走行状態に合わせてエンジンの吸気・排気のバルブ開閉タイミングを連続的に制御するシステムで、出カアップに加え燃費の向上、排気ガスの抑制に大きな効果を発揮する。

当社でも、1986年からVVT開発に挑戦。
91年に発売されたトヨタ・カローラ/レビンに歯車型VVTが初めて採用されるに至った。

ところが、この歯車型VVTへの評価は芳しくなかった。
多くの課題を抱えていたため、他車種への展開が進まなかったのである。
コンペには負け続け、改良もうまく進まず、やがて社内で「良いアイデアが出なければ、チーム解散だ」とささやかれるまでになった。

VVT(Variable Valve Timing)

VVTはカムシャフトを通じて、エンジンの吸気・排気バルブの開閉のタイミングを変化させる。
VVTの回転自体は、オイルコントロールバルブ(OCV)からの油圧によって制御される。(ベーン式)

VVT(Variable Valve Timing) VVT(Variable Valve Timing)

連戦連敗を脱するために。もう一度、ベーン(羽根)型に挑もう 連戦連敗を脱するために。もう一度、ベーン(羽根)型に挑もう

VVTには、歯車型と油圧で制御するベーン(羽根)型(下図参考)があり、90年代半ばまでは歯車型が主流だった。
しかし、歯車型は高い加工精度が要求される上、機構が複雑で大型。
さらに摩擦が大きく、応答も遅かったため、当社は86年から歯車型の弱点を解消する小型・軽量のベーン型VVTの開発に着手した。

ベーン型は世界でも実用化した例がなく、技術的に未知な部分が数多くあったため、開発は試作段階まで進んだが、歯車型なみの性能に達することができず、製品化には至らなかった。
そのため機関系技術部では、ベーン型の開発をいったん保留し、当時の主流であった歯車型を開発した。
ところが、その歯車型VVTが連戦連敗だったのだ。

95年初夏、機関系技術部は選択を迫られていた。
「もう方針を変えるしかない」
すなわち封印していたベーン型VVTの開発である。

目標はトヨタの直列6気筒エンジンに向けた提案。
約2カ月間という短期間であったが、なんとか性能とコストをクリア。
自信を持ってコンペに臨んだ。

ところが、ここでも勝利の女神は微笑んでくれなかった。
性能やコストではほぼ同レベルだったものの、指名先は競合他社であった。
「この技術が日の目を見ることはないのか…」
メンバーに落胆の色は隠せなかった。

ベーン型VVTのしくみ

油圧でベーン(羽根)の角度を変化させ、バルブの動作タイミングを調節する。

  • ベーン型VVTのしくみ ベーン型VVTのしくみ
  • ベーン型VVTのしくみ ベーン型VVTのしくみ
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  • ベーン型VVTのしくみ ベーン型VVTのしくみ
  • ベーン型VVTのしくみ ベーン型VVTのしくみ
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「世界が市場だ!欧州で挑戦しよう」ルノーでの実績が、最初の一歩になった 「世界が市場だ!欧州で挑戦しよう」ルノーでの実績が、最初の一歩になった

意気消沈するメンバーを励ましたのは機関系技術部長だった。
「トヨタがダメでも世界中どこでも自動車メーカーがある。
市場は世界だ。
欧州でもう一度、挑戦してみよう!」

それが出発点だった。
メンバーは95年11月、欧州に飛び、あらゆる自動車メーカーに足を運んだ。
しかし、欧州では“AISIN”の知名度はまだ低く、すぐに商談になるメーカーはなかなか現れない。

結局、興味を示したのはルノーのレース関係を担当しているルノースポーツだけだった。
96年初め、早速同社のレース車に当社製VVTを搭載してみたところ、見事優勝。
これをきっかけに少しずつ欧州での知名度が上がり、ルノー本社からも製品化受注の依頼が飛び込んできた。

やがて大きな実を結ぶこととなるベーン型VVTの、これが最初の一歩だった。

認められた「BMW詣で」。が、そこには厳しい要求が待っていた! 認められた「BMW詣で」。が、そこには厳しい要求が待っていた!

開発陣はルノーでの設計業務の合間をぬって、アイシン・ヨーロッパのメンバーと自動車メーカー詣でを続けた。

そしてドイツ・ミュンヘンのBMW本社で、3度目の訪問でようやくベーン型VVTのプレゼンにこぎつけたのである。

何回かの交渉の後、現地の部品メーカー数社とともにさらに具体的な技術提案を出すよう依頼があった。
従来の歯車型VVTに比べ、低コストで応答性にも優れているベーン型の特性が認められた結果だった。

ところが、そこからが大変だった。
「VVTを排気側にもつけてほしい」というのがBMWの要求だったからだ。

吸気側のみのシステムに比べ、より綿密な制御を可能にして、効率を高めようという狙いだが、技術的な難しさがあり、これまで、排気側にVVTをつけたメーカーはなかった。

具体的には、排気側のベーンの初期位置が最進角(バルブの開閉が最も早いタイミングになる角度)になるようにしなければならない。

ところがVVTというのは油圧によってピストンの位置とバルブの開閉タイミングを変えるものであり、油圧がなければ最遅角(バルブの開閉が最も遅いタイミングになる角度)で止まってしまうものである。

それを油圧ゼロの時でも反対の位置、つまり最進角へ持っていけというのだ。

最進角と最遅角

通常、油圧のかからない状態ではエンジンの動力により、ベーンは最遅角側へ固定されるが、BMWの要求は油圧ゼロでも最進角へ動かせというものだった。