世界最小・最軽量。性能ナンバーワンのブレーキシステムを開発せよ 世界最小・最軽量。性能ナンバーワンのブレーキシステムを開発せよ

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アンチロックブレーキシステム開発物語 アンチロックブレーキシステム開発物語
アンチロックブレーキシステム

安全に止まるためのブレーキシステムABS 安全に止まるためのブレーキシステムABS

クルマの基本性能のうち、「曲がる」「止まる」という機能は安全走行に直結するきわめて重要な要素である。
たとえば、凍結した路面や濡れた道路などを走行中に、急ブレーキによって車輪がロックし、ハンドル操作がきかなくなった経験はないだろうか。
そうなると車両は制御不能となり、事故へつながる危険性が高まる。

この急ブレーキによる車輪ロックを防ぐ安全装置がアンチロックブレーキシステム(ABS)である。

ABSを搭載した車両では、運転者が急ブレーキを踏んだとき、コンピューター制御によってブレーキを断続的に働かせ、車輪のロックを防ぐことができる。
その結果、安全に止まることができるのだ。

アンチロックブレーキシステム(ABS)

急ブレーキ時の車輪ロックを防止し、ハンドルの操作不能や車体の横すべりを防ぐシステム。
濡れた路面や雪道で効果を発揮する。

アンチロックブレーキシステム(ABS) アンチロックブレーキシステム(ABS)

ABS戦国時代の中、大きな動きが ABS戦国時代の中、大きな動きが

1970年代からアイシン精機はこのABS開発に関わってきた。
初代はバキューム式(空圧式)ABS、80年代に入って油圧式ABS、現在の主流である制御ユニット一体型四輪ABSへと進化を遂げ、主にトヨタ自動車など国内自動車メーカー向けにABSを生産してきた。

安全性能へのニーズが高まるとともに、かつては特別装備であったABSを標準装備する車種が増え、需要は拡大。
それにともない、他の部品メーカーとの賊争が激化していった。
80年代後半から90年代半ばまでは、2年に1度の頻度で各社が新製品を投人するという“戦国時代”が続いていた。
そうした中、93年から94年にかけて業界に大きな動きが出てきた。

トヨタ自動車がABSを全車に標準装備する計画を発表したのだ。
これにより今まで以上に開発サイクルが短くなり、低コスト競争も加速することが予想された。

さらに厳しさを増す環境の下、どう事業を育てていくか。
各社は難しい対応を迫られた。

ABSの構造

車輪速センサーがタイヤの回転状態をチェックし、スリップを検知すると、制御コンピューターが油圧を制御してタイヤロックをふせぐ。

ABSの構造 ABSの構造

開発チームの合言葉は「サイズ、重さ、コスト、すべて2分の1に!」 開発チームの合言葉は「サイズ、重さ、コスト、すべて2分の1に!」

業界のこの動きに敏感に反応したのが、当社の走行系技術部だった。

「この好機をどう捉え、事業化につなげていくか」
「全車標準装備となるとコスト競争になるのは目に見えている」
「しかし、需要拡大が明らかな以上、指をくわえてみていることはない」
「我々にはこれまで培った技術がある。ライバルに負けない最高のABSをつくれば、勝機は見えてくるはずだ」

こうして、「世界最小•最軽量、世界ナンバーワン性能のECU一体型ABSを開発する。しかも低コストで」という方針が決まった。

目標は従来品と比べて、サイズ、重さ、コスト全てを“2分の1”にすること。
そうすれば世界での競争力が高まるし、市場にとっても大きなインパクトとなる。

「全てを2分の1に!」が全開発部門の合言葉となった。

そのためには、要所で世界初の技術が必要であり、製品化のための壁は高い。
それをなんとしても乗り越え、「AISINを代表するABSとして、21世紀に向け勝利(Victory)をめざす」、そんな決意を込めて、開発品は「A21V(後にGA21と改名)」と命名された。

1996年11月。新たな目標に向けた開発が動き始めた。

ABSのしくみ

車輪速センサーがタイヤのスリップ状態を検知すると、電磁弁が油圧を制御して、車輪のロックをふせぐ。

頭脳となる制御装置を名刺サイズに 頭脳となる制御装置を名刺サイズに

前モデル「AIV」の容積は2リットル、重量は3kg。
これを2分の1にするということは、容積1リットル以下、重量1.5kgにするということである。

まず、開発陣が取り組んだのはABSの頭脳となる制御コンピューター(ECU)のサイズを小さくすることだった。

目標はECU基板を半分にすること。
具体的には“名刺サイズ”だった。

着目したのはIC。それまで入出力部、駆動部、電源部など各機能にはそれぞれ違うICfが使われていた(下図参照)。
それを1個のICに集約できないかと考えたのだ。

もちろんそうしたICはまだどこにも存在しない。

「電磁弁の駆動用パワーICまでも1個のメインICに集約させるわけだろ。そんなECUなんて世界中探してもないぞ」
「なければ、作ればいい」

しかし世界初への試みはそんなに甘くなかった。

名刺サイズ化の鍵は
IC部をコンパクトにする技術

従来3つだったICをひとつのICに入れ込むことができれば、大きな部品をなくすことができ、基板を小さくできる。

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