アイシンものづくり精神(スピリッツ)5 アイシンものづくり精神(スピリッツ)5
アンチロックブレーキシステム開発物語 アンチロックブレーキシステム開発物語

めざせ!世界最小。0.1Ω(オーム)のせめぎ合い めざせ!世界最小。0.1Ω(オーム)のせめぎ合い

たとえば電磁弁の抵抗値である。
駆動用パワーICをメインICに内蔵するには最低でも5Ω(オーム)以上にする必要があり、それに取り組んだのだが、結局わかったのは5Ω以上に上げることが不可能ということだった。
ここにいたって開発陣は、甚板内のレイアウトとICの中のレイアウトを全面的に見直す作業に取りかからざるを得なかった。

0.1Ω単位で抵抗値を変えながら、最適な数値を探っていくのだ。

ECU基板担当は電磁弁の駆動用パワーIC を少しでも高い抵抗値で設定したい。
一方、電磁弁担当は、より低い数値で妥協点を探ろうとした。

「あと0.1Ω上げられないかなぁ」
とECU基板担当が言えば、
「これ以上上げると、弁の作動を保証できなくなるよ。限界だよ」
と電磁弁担当が応じる。
0.1Ωでのせめぎ合いが続いた。

そんな葛藤の中から、8.6Ωと4.3Ωの組み合わせで設計要求をクリアできることを発見した。

こうして名刺サイズとはいかなかったが、従来と比べ超小型化を達成。

当社が先鞭をつけたパワー内蔵ICを使った構成は、現在ではABS用ECUの主流となっている。

ABSの小型化 ABSの小型化
ABSの小型化
右:1992年E-ABS(4.5kg) 
左:2000年GA21(1.7kg)

電流と抵抗の関係

抵抗を大きくすると流れる電流は小さくなる。
より基盤を小さくするため、ECU基盤担当が抵抗値を上げようとする一方、電磁弁担当は弁の作動に必要な電流を確保するため、抵抗値を低く設定しようとした。

電流=電圧/抵抗

世界最小・高性能のABS誕生 世界最小・高性能のABS誕生

小型化への取り組みは油圧制御部分にも及び、ここでも新たな技術を開発したほか、工法も見直すことで2000年3月、容積と重量で2分の1という目標をクリア。
「GA21」と改名されたABSは完成した。
世界最小•高性能を誇るECU一体型ABSの誕生だった。
GA21はトヨタ・ビスタ、オーパ、三菱・パジェロイオ、ダイハツ・テリオスなど、量販車に次々と採用された。

こうした中で2001年、新会社としてアドヴィックスが設立された。
これを受けブレーキ系製品、システムの開発・営業部門は新会社に引き継がれた。
かつて走行系技術部に所属し、ABS開発に関わった技術者の多くは同社に出向した。

その一方、当社の生産部門では継続してABSを受注・製造している。

「自動車メーカーが部品メーカーに望んでいるのは、個別製品ではなく、システムとして製品を発注できること。ここ数年でその傾向がますます強くなってきている。
現在はアドヴィックスがシステム提案する機会が増えたことで、ABSを含むブレーキ系製品を生産するアイシン精機も、システムで受注できる利点が出てきた」
アドヴィックスの誕生による環境変化をこう分析する声もある。

さらなる高性能化、エレクトロニックスタビリティコントロール(ESC)への応用など、ブレーキ関連システム製品の開発は次なるステージへ向け、新たな活動が始まっている。

アドヴィックス
2001年7月、トヨタ自動車、デンソー、住友電気工業、アイシン精機の4社によって設立。ABSをはじめとしたブレーキ関連システム製品の開発・販売を行う。
エレクトロニックスタビリティコントロール(ESC)
急なハンドル操作時や滑りやすい路面を走行中に車両の横滑りを関知すると、必要な車輪に自動的にブレーキをかけ、車両の進行方向を保つように車両を制御するしくみ。