アイシンものづくり精神(スピリッツ)3 アイシンものづくり精神(スピリッツ)3
パワースライドドアシステム開発物語 パワースライドドアシステム開発物語

水面下でのトライ。ついに理想の材料が 水面下でのトライ。ついに理想の材料が

「正式なテーマではなくなった。でも、このままでは終わりたくない」
これがメンバーの一致した意見だった。

当社と同じく、付加価値の高い製品を探していたT社も、協力を快諾した。
こうして、開発チーム・材料技術部・T社の3者が協力し、水面下でのトライが始まった。
メンバーの情熱を感じとっていたのだろう。上司もこれを黙認した。

主材料、添加物、合成比率などさまざまなサンプルをつくって評価を繰り返すこと4ヶ月。
ようやく条件をクリアする材料ができあがった。
スチレン系エラストマーにオイル(パラフィン系鉱物油)を添加したもので、ほぼ期待どおりの柔らかさ、強度・耐熱性・耐久性を持っていた。

一方、もう一つの課題であった弾性体(クッション材)の形状設計にも早くから取り組んでいた。

ジェルマットレスのように体圧を分散させるためには弾性体の配置密度を上げる必要がある。
しかし、それでは使用する材料が増え、コスト高になってしまう。軽量化にも反する。
どうすればできるだけ少ない材料で圧力分散性を良くすることができるのか。

  • カップ型 カップ型
  • リング型 リング型
  • チューブ型 チューブ型
様々な形状の弾性体の試作品
(左から カップ型、リング型、チューブ型)

「押せば広がる」という発見が材料を少なく、密度は高くを実現! 「押せば広がる」という発見が材料を少なく、密度は高くを実現!

ヒントは何気ないシーンに隠されていた。

メンバーが弾性体のサンプルに触っていたときのことだった。
サンプルを押す。弾性体だから当然、つぶれて変形する。手を離すと、元に戻る。
再び押すと、つぶれて変形する。この瞬間に気づいたのだ。

「弾性体を押すと、つぶれた分面積が広がるじゃないか」

体重分布のうち最も重いお尻の部分の圧力分散を改善すれば、全体として圧力分散性は良くなることはわかっていた。
そこで一定の間隔で円柱形の弾性体を配置してやれば、お尻の重さが加わったとき、弾性体の面積が広がり、隣接した弾性体同士がちょうど接したようになる。
点から、面全体で体重を受ける形になるのである。
人体の凹凸に柔軟に対応して圧力分散性をよくすることができ、しかも使用量も少なくできる。

さらに、弾性体を独立配列にすることで、体の動きに対して個々の弾性体が柔軟に変形して追従するため、寝返り時の負荷も少なくなる――。

のちに「千鳥配列」と呼ばれるようになった新しい構造が誕生した瞬間だった。

このアイデアは直ちに特許出願された。

千鳥配列

体のあらゆる動きにフィットする、マット一面に一定の間隔をおいた配列。

千鳥配列 千鳥配列

許されたリターンマッチ!開発テーマに返り咲く 許されたリターンマッチ!開発テーマに返り咲く

材料と構造は決定した。成形法にも目処をつけ、開発メンバーは2002年4月に試作品を完成させることができた。
そして7月、待望のニュースがメンバーのもとに飛び込んできた。

「このマットレスを正式な開発テーマとして再登録する」

リターンマッチが許されたのだった。

だが、商品化に向けては最後の関門があった。
開発コンセプトにもうたわれた「寝返りのしやすいマットレス」をどう定量評価するかということである。

販売に弾みをつけるためにも、最大のセールスポイントになる寝返りのしやすさをデータで示さなければならない。
客観的な評価基準として、開発チームが目をつけたのは、筋肉の動きを電気的に測定するデータ(筋電位)だった。

直ちに試作品だけでなく、ジェルマットレスやスプリングマットレスで筋電位を測定したところ、試作品での筋電位の振幅が他のマットレスより低いことが判明。
寝返りするときの抵抗が少ない、つまり寝返りしやすいことがわかったのである。
データを睡眠の権威である大学教授に提供し、寝返りのしやすさについてのお墨付きも得ることができた。

筋電位による寝返り性能の比較

電位(波形)が大きいほど、筋肉が大きく動いている。(負担が大きい)成人男性首部で測定。

スーパーフレックス
フィットマットレス
従来マットレス

「スーパーフレックスフィットマットレス」ベッド業界に衝撃デビュー! 「スーパーフレックスフィットマットレス」ベッド業界に衝撃デビュー!

2003年秋、「スーパーフレックスフィットマットレス(SFF)」と命名された新商品は、工場、営業や販売企画の努力の甲斐もあり、衝撃的なデビューを果たした。

反響は大きかった。
ベッド業界に衝撃を与えたことは当然のこととして、「寝返りがしやすい」というコンセプトのユニークさが受け、一般ユーザーからも脚光を浴びた。
新聞やテレビ局からの取材も相次いだ。

販売成績も反響の大きさを裏づけるものだった。
販売開始当初こそジェルマットレスの販売数に届かなかったものの、2003年度にはジェルの減少分をSFFが補填し、2004年度以降はジェルとSFFの合計販売数が増加に転じ、V字回復を果たした。

新しいカテゴリーを打ち立てる、オンリーワン商品をめざすという当初のねらいは、確実に達成しつつあるのだ。
リターンマッチでの勝利。それを可能にしたのは、決してあきらめなかったメンバーの執念だった。

そして現在、メンバー達は「さらに進化したスーパーフレックスフィットマットレスの開発」という次のテーマに向けた挑戦を始めている。

完成したスーパーフレックスフィットマットレス。