アイシンものづくり精神(スピリッツ)2 アイシンものづくり精神(スピリッツ)2

パワースライドドアシステム開発物語 パワースライドドアシステム開発物語

開発の焦点は、ケーブルを巻き取る心臓部。駆動ユニットだ 開発の焦点は、ケーブルを巻き取る心臓部。駆動ユニットだ

ドアを動かす機構は決まった。
次はシステム製品として、いかに各製品を形にしていくかだ。

主要な装置の多くは、専門ノウハウを持つ異業種の外部メーカーとの共同開発によって進められた。
なかでも開発の焦点となったのは、ケーブルを巻き取る、開閉の速度を制御するなど、作動の心臓部となる躯動ユニットだった。
同ユニットには、ドア内部に納めるため小型・薄型化、軽量化が求められた。
またドア内部に納めたことによるドア重量の増加に対応するため、高出力化も必要だった。
モーターは内部構造までメーカーと見直し、電磁クラッチでは回路を変えたり、素材まで変更するなど極限レベルでの試行錯誤が進められた。

こうして世界最小、高出力の駆動ユニットが開発されたのだった。
関連した特許は、30を超えた。

◀ 新開発された世界最小の駆動ユニット。

タイムリミット一日前に完成!「でんでん虫式」給電ユニット タイムリミット一日前に完成!「でんでん虫式」給電ユニット

2001年秋の発売をめざし、新型トヨタ・ノア/ヴォクシー向けPSDの開発期限は迫っていた。
最後の課題として残ったのが駆動ユニットに電気を供給する給電ユニットの開発だった。

従来方式では給電ユニットは車体側にあった。
ところが、今回はドアに駆動ユニットがあるため、ドアが開いていても給電できる方式が必要だった。

ドア内蔵型では、スライドドアの開閉に合わせて、ドア内の給電ユニットと車体側のバッテリーをつなげる電線(ハーネス)の束が伸縮する。
この伸縮する電線をドア側に収納する新機構が不可欠だった。

開発は難航した。
「問題は伸縮を繰り返す電線をいかにスムーズに巻き取って、ドア内にコンパクトに納めるかだな」
「この給電ユニットが完成しないと、ドア内蔵型PSDの開発はできないんじゃないか?」
技術者たちには、そんな不安もよぎった。

GOサインが出たのは01年5月。
翌日がタイムリミットという、まさに瀬戸際での完成だった。

電線は20数本のコードを束ねたものだが、断面が円形だと巻き取ったときかさばってしまうため、束の断面を楕円形にして少しでもコンパクトに巻き取れる工夫を施した。
給電ユニットの形状は薄い丸形で、ケーブルが巻き取られると渦巻き状になり、全体にカタツムリのような形を連想させた。
そこでこの給電ユニットは通称「でんでん虫式」と呼ばれた。

何とも微笑ましいネーミングながら、そこには技術者たちの苦闘の軌跡が織り込まれていたのだった。

「でんでん虫式」給電ユニット

ドアの開閉に応じてユニット内で電線がスムーズに動く。

「でんでん虫式」給電ユニット 「でんでん虫式」給電ユニット
完成した「でんでん虫式」給電ユニット