●便利さが受けて大ブレイク。
 広がるドア内蔵型PSD市場

 「ローマは一日にして成らず」。技術もまた然り。
 1997年トヨタ・ラウムでスライド機構、トヨタ・タウンエース/ライトエース・ノアで動作のメカニズム、ECU、制御ロジックの技術を習得。一歩ずつ経験を蓄積した結果が、新型トヨタ・ノア/ヴォクシーで“世界初”となるドア内蔵型PSDの開発へと結びついた。PSDは市場で大ブレイクした。

 「93年の東京モーターショーでの試作に関わったとき、ルーズな動きをするメカ、正確に動くコンピューター、この両者の融合が開発のポイントだと思った」(福元)
 今回の開発でもメカと制御の柔軟な組合せが鍵を握った。そこにものづくりの妙味がある。

 「入社以来、車体設計で最新の分野に関わってきた。専門は電子系・制御系の分野ですが、メカとの組合せでその面白さを感じています」
 そう語る鈴木は学生のとき、前述の東京モーターショーに足を運び、試作車を見学した一人だ。2000年5月、米国のSAE(米国自動車技術会)で彼は、駆動ユニット開発に関する論文発表も経験した。人と技術は何か目に見えない力でつながっているのかもしれない。

 ドア内蔵型PSDの搭載車は、年々増加の一途を辿っている。トヨタ自動車では全車種への展開が計画されているが、現在ではさらに日産自動車、スズキなども当社製品を採用。また、PSDと部品を共有化したPBDは、02年にはトヨタ・アルファード向けを国内生産し、03年1月には北米でシエナ向けを生産開始。こちらも順調な動きを見せている。

 ところで、PSD技術の未来はどうなるのか。
 「さらに後部トランクや運転席ドアなど、将来はあらゆるドアのパワー化(自動開閉)を進めたい」と福元は言う。
 04年夏、トヨタ・ポルテが市場に登場した。小型乗用車で初めて、それも前席の助手席側ドアにPSDを搭載。当社が開発したドア内蔵型PSDが持つ“汎用性の高さ”が生かされた形だ。
 PSDがミニバンの、そして乗用車の標準装備となる――。それも決して遠い先の夢ではない。


文中の所属・役職は当時のものです。

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