●試作の過程で思わぬ落とし穴
 ――搭載スペースがない!

 開発は車体系技術部と電子系技術部を中心に評価(実験)、解析、材料など各メンバーが加わって進められた。多いときは、開発メンバーだけでも約30名の体制がとられた。

 新製品の開発では、試作品ができて初めて、設計上の問題点が浮き彫りになることがしばしばある。新型トヨタ・ノア/ヴォクシー向けのPSDでもそうした問題が、開発が進むにつれて発生していた。1999年秋、最初の試作品が完成したときのことだった。
 最初の試作品をトヨタ・ラウムに搭載して試験を行ったところ、予想以上に順調に作動していたため、メンバーは安心していたのである。ところが、その後、ノア/ヴォクシーの図面を見た瞬間、メンバーの顔色が変わった。
 「駆動ユニットを搭載するスペースがないじゃないか!」
 ノア/ヴォクシーの場合、ラウムと異なり駆動ユニットを配置していたドア内の窓直下にスペースがないのである。青天の霹靂だった。

 「駆動ユニットや機構を改良するしかない」 具体的には、8の字プーリー横に置いていたユニットをアウターケーシングというチューブを使い、そのなかにケーブルを通しドア内下部に配置したのである。これでなんとか納まることは納まった。ところが、今度は全く動かないのだ。
 ここからが苦難の始まりだった。様々な部品からなるPSDを限られたドア内部の空間へ設置するには、全ての部品を小型化する必要があった。
 モーターは駆動力が足りず、類似サイズのものを検証してもパワー不足であった。そのため、ワイパーモーターサイズへの転換を余儀なくされたのだが、となると構成部品の設計はいちからやり直し。
 また、ケーブルとチューブとの伝達効率が低いことが駆動力不足の原因だということがわかったため、効率を高めるためにチューブをできるだけストレートに配置するよう途中にプーリーを追加したりもした。それに合わせてドアパネル形状も変更せざるを得なかった。開発は全くゼロからの再スタートになったのである。

 ドアを開閉する巻き取り用ケーブルの改良も行った。ケーブルは樹脂製チューブの中に、コーティングされた金属製ワイヤーを通す構造である。信頼性技術部で行った耐久実験の結果、チューブ内側とワイヤーのコーティングが摩耗するとワイヤーが動きにくくなることが分かった。そこでチューブ素材とコーティング素材をいちから見直すべく、材料技術部に検討を依頼した。

 依頼を受けた材料技術部では、材料メーカー数社の素材を比較検討して最適な材料を選ぶ一方、磨耗測定用の試験装置を新たに開発。テストピースを用いた摩耗試験を繰り返し、摺動性のよい組み合わせの選定と摩耗量を推定していった。そしてすき間や樹脂チューブ肉厚などスペックを決定。こうしてケーブルへの要求性能をクリアしていった。
 ドア開閉中に発生する「脈動」対策では解析技術部が分析を担当。現象を理論的に解明し、原因となる要素を一つずつつぶしていった。また電子系技術部は安全面から挟み込み検知の研究を進め、苦しみながらもタッチセンサーでの感知、ドアの開閉速度の変化などを的確に識別する制御ロジックを開発した。こうした各部門の奮闘もあって、ようやく駆動ユニットのドア内搭載に目処がついたのだった。

ケーブルの構造

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