●ダイカスト工法など、新たな技術を次々と採用

 小型化・低コスト化に向け、新たな技術で難関を乗り越えてきた開発チームだったが、最大の課題が残っていた。ABS装置のサイズを決める最も大きな要素であるACTハウジングである。
 前モデルの「AW」で採用されていたのは押出し材だったが、これには弱点があった。後加工で切削などに手間がかかり、コスト負担が大きいのである。これを解決すべく採用されたのが、アルミ製ダイカスト(鋳造)工法だった。従来の工法と比べ、小型化に適していて、コスト面も有利だったからである。だが、一方で鋳巣が生じやすいという欠点を持っていた。特にACTハウジングのような厚い形状には適さないと見られていた。しかし、小型化・低コスト化をクリアするにはダイカスト工法が欠かせないと判断した当社は、生産技術部や仕入先との連携により、挑戦を開始。最終的に品質的にも満足のいくダイカストによる製法を確立した。

 生産技術部で量産化に取り組んだ電子・走行系生技グループリーダーの林は、ハウジング製造を担当したアイシン軽金属と西尾工場で熱弁を振るっていた。
 「せっかく設備投資するんだ。全工程に新しい技術を採り入れようじゃないか」
 その熱意を共有した同グループの鷲見、天野により、続々と新しい技術や工夫がなされ、懸案だった後工程での加工をかなり減らすことに成功。また、従来ボルト締めしていた部分は、油漏れの発生を防ぐために、アルミ製ハウジングをかしめ加工(圧縮)で変形させるシール技術で対応した。
 「同じことをやっていては成長はない。つねに新しい技術を採り入れることで、次のステップへと駆け上ることができる」という林の信念に対する現場からの答えだった。


 一方、ECU基板の生産を担当したのは半田電子工場だった。
 ここから搬送されたECU、ACTハウジングなどが半田工場で完成品に組み付けられていくのだが、それが可能だったのは95年に量産を始めた「AW」の量産時に、新たな基板製造用の設備を整えていたからだった。
 その後も改善の手は緩めていなかった。半田電子工場長・小浜やECUの基板実装・組付を担当した生産技術部の高橋、神谷、鳥居らを中心に、実装ラインなどでクリーン度の向上や異物対策を一層強化したほか、床面を静電気防止タイルにするといった細かな改善も重ねた。保管庫の温度湿度管理など各工程の環境維持にも気をつかった。

 結果は上々だった。手作業を減らし、最新の生産ラインや評価装置を導入することで、前回のAWのECUで5分かかっていた実装工程を1分に短縮できた。また高速で品質検査を行うため、今まで製品を実際に作動させていた検査工程には、通信で自己診断できる“次期ダイアグモニター”を採り入れた。

 こうした技術導入や改良はほんの一部にすぎなかったが、神谷や鳥居たちの「次の工程への配慮」は着実な成果を生み出していた。

かしめ加工の実験

次期ダイアグモニター
従来よりも大容量、高速で通信可能なECUの自己診断モニター。
例えば、検査機から、信号を与えた時の状態を次期ダイアグモニターでECUがどのように受け取っているかを通信して調べ、回路に異常がないかを検査するのに使用している。

5/8