●常識を打ち破る発想で
 世界初の配管洗浄レスGHPを開発

 GHPの寿命は室内機、室外機とも15年ほどであるため、バブル期に大量に販売されたGHPの代替需要が00年以降に期待されていた。その大量の代替需要をねらおうというのが「リニューアル対応機」だった。
 80年代末頃までGHPには「R22」という冷媒ガスが使われていたが、オゾン層を破壊するということで生産中止になり、それ以降の製品には代替フロンが使われることになった。
 ここで問題になったのが配管だった。代替フロンと「R22」とでは使用する冷凍機油が異なるため、これらが混じると不純物が混ざって潤滑不良となり、コンプレッサーが壊れてしまう。したがってリニューアルにあたっては天井や壁に残された配管を取り替えるか、入念に洗浄するしかない。ところが取替えはもちろん、洗浄も大変な重労働。多くの資金と人手、長い時間を必要とする。
 「取替えや洗浄のいらないリニューアル機だったら、圧倒的に有利なんだが」
 「配管洗浄レスか。もちろんそれに越したことはないが、難しいだろうな」
 「どの論文を見ても冷凍機油を混ぜてはならないって書かれているからね」
 「でも、本当に混ぜたら壊れるんだろうか」
 異種の冷凍機油が混ざり合うと「コンタミ」と呼ばれる異物やゴミを生じたり、互いの相溶性がないためオイルリターンが悪化して冷凍機油の性状を劣化させ、結果としてコンプレッサーが破損する――これが当時の常識だった。日本冷凍工業会もそうしたことをアナウンスしていたが、その常識に挑戦しようというのだ。
 「混ぜてはならないというのはひょっとしてメーカー側の言い分じゃないだろうか。使う側からすれば、洗浄せずにリニューアルできるにこしたことはない。ダメかもしれないけれど、試してみる価値はあるぞ」

 開発メンバーが採った方法は地道で根気がいるものだった。配管の残存冷凍機油と新しい冷凍機油を混合させて実験し、信頼性に影響がないことを一つひとつ証明するというのだ。これなら確実性は高い。だが、問題があった。
 「市場で使用されている冷凍機油を全て調べるとなると、時間がかかりすぎる」
 「対象機種を絞り込みましょう」
 「リニューアルですから、全てを対象にする必要はないと思うのです」
 調べてみると4系統ほどの冷凍機油を調べれば、既存機の約8割をカバーできることがわかった。
 あとは一つひとつ調べていくことだった。残存冷凍機油と混合した場合、新しい冷凍機油は変質しないか、コンプレッサーへの影響はないかといったことを、実機を使って試験していくのだ。大変な作業だったが、これが決め手になった。
 さらに冷媒配管内の不純物を除去するため、不純物の侵入を防ぐフィルターも新たに開発した。これは低圧配管で1,000メッシュという、一般的なフィルターの10倍の細かさを持つものだった。
 こうして異種のオイルを混合して使っても何ら問題のないリニューアル対応機が誕生した。
 常識が打ち破られた瞬間だった。

 ところが、そうした画期的なGHPだったにもかかわらず、その良さはガス会社になかなか認められなかった。当社しか開発していなかったため、にわかには信用できなかったのだろう。そこで三菱重工業や日立空調システムなどの室内機メーカーとアライアンスを組み、本来なら門外不出のデータを織り込んだプレゼンテーションを敢行。ようやくガス会社にも受け入れられた。

 こうして01年、発売されたリニューアル対応機は世界初のGHPとして、「GHPのアイシン」の名をさらに高めることになった。無理もない。既設配管を洗浄しなくてよいため施工費が最大で80%も削減でき、工期も大幅に短縮できる。配管を取り替えないので廃棄物がほとんど出ない点も画期的だった。それを証明するかのように05年には、当社の配管洗浄レス型GHPは業界のスタンダードとして認められるに至った。

リニューアル用フィルターキット
(上:液管用フィルタードライヤー、
下:ガス管用ストレーナー)

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