●故障発生率を劇的に改善した
 起死回生モデル完成。次の挑戦へ

 一方、開発チームの奮闘も続いていた。
 OCRの測定方法、試験基準を完成させる一方で、ベアリングの最適隙間、メカシールの材質、異物除去システムなどの改良・開発に取り組んでいたのだ。
 その努力が実り、90年12月には耐久時間が初めて7,000時間を突破した。当初と比べると大変な進歩である。開発担当たちが手を取り合って喜んだのは言うまでもない。一応内部確認のため分解してみると見た目にもきれいである。
 ところが、一週間かけて細部まで調べてみると意外なものが見つかった。
 「なんだこれは」
 メンバーが調べていたのはフロントベアリングの外輪内部。見ると明らかに内部剥離が発生していた。誰かがうめくように叫んだ。
 「白色流動層だ」
 内側でベアリングの破損が進行していたのである。
 ラインオフは4カ月後。早急に対策を講じなければならない。正月どころではなかった。
 「ベアリングを覆っている外輪の剛性が不足しているのかもしれない」
 「でも、それを証明するデータが不足しています」
 「入念にデータを取っている時間的余裕はありません」
 時間か品質かの決断に迫られたメンバーの一人が言った。
 「安全性を第一に考えて外輪の材料をアルミから鋳鉄に変えよう。これしかない」
 ラインオフが迫っているなかでの英断だったが、正月を返上して対策に走った。これが効を奏し、91年、予定通りに改良型91モデルが完成。すぐさま市場に投入された。

 結果は上々だった。コンプレッサーの不具合は劇的に減少し、92年からは、すでに発売されていたGHPの部品交換を行った結果、 故障発生率はわずか10分の1にまで減り、ついに先行メーカーをしのぐことができた。まさに起死回生のモデルだった。
 とはいえ、一度着せられた汚名を返上することは容易ではない。信頼を失うのは一瞬だが、回復には時間がかかるからである。また、品質問題に明け暮れた結果、商品のバリエーション展開も進んでいなかった。故障は少なくなっていたが、売上げを伸ばすまでには至らなかった。
 当初16名だった開発メンバーが10名へ減らされたなかで、次の開発を行う必要があった。
 メンバーたちがターゲットに定めたのは、どこも開発していない高速スクロールコンプレッサーを使った10馬力の新型GHPであった。10馬力タイプはすでに市場が存在していたし、なによりメンバーたちには商品バリエーションを増やさなければならないというミッションがあった。

白色流動層
水素が侵入しやすい環境で、高荷重部位の金属組織に白色の組織変化が生じ、表層組織が脆弱になって転がり疲れを加速させ、計算寿命以下で剥離が発生する現象を言う。

白色流動層の発生によって剥離したベアリング破断面組織

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