●敗北から栄光へ。世界が認めたAISINの技術

 毎年秋、ドイツ・ミュンヘンでは盛大にビール祭が行われる。その時期、BMWメンバーとの懇親を目的にアイシン側が企画した無礼講が毎年開かれている。
 「今年で何度目のビール祭になるだろうか」
 酔いが回るなかで江口はふと思った。
 時にはぶつかり合いながら、アイシンとBMWの間にさらに強い絆ができた。その後は、問題が発生すると互いに協力的に解決策を練った。幾多のトラブル発生に対して迅速な対応を繰り返すなかで、仲間意識が芽生えた。

 BMW向けVVTでは、吸気側に加え排気側にVVTを搭載する技術を用い、従来は不可能だった応答速度の調整までできるようになった。BMWでの実績は北米GM、豪州フォードなど海外メーカーとの取引へとつながっていった。
 当社製VVTの搭載により、最大で自動車の出力は8〜10%向上、燃費は3〜6%向上。また排気ガス(NOx)は40%低減される。
 こうして当社VVTの年間生産量は98年度の12万個に始まり、99年度40万個、00年度53万個と伸び続け、03年度には約150万個に急増。現在は国内外7社に採用され、年間200万個を生産している。まさに機関系事業の基幹製品に成長した。

 当初6人の動弁チームは一挙に20数名に膨れあがった。リーダーであった江口は振り返る。
 「トヨタ自動車でのコンペに負けたときは本当に残念だった。しかし、これをバネに、全員が一丸となって粘り強く開発、販売してきたことが、今のVVTの拡大につながったと確信しています」

 コンペに敗北し、欧州メーカーへの販売ルートを模索したことで新たな活路が開けた。国が違い、言葉や文化は違っても、人と人が協力し、ときに意見を戦わせながらものを作る。その姿勢に国境はない、と江口は感じた。
 そして、VVT技術にもまた国境はない。


文中の所属・役職は当時のもの、上記リストの所属・役職は2005年6月現在のものです。

ビール祭でのVVT開発メンバー

VVT生産量の推移

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