●テスト車が走らない

 2002年1月、最終試作によるテスト走行を繰り返していたとき、新たなトラブルが発生した。テスト中に荷重制御装置が動かなくなり、クルマが止まってしまったのだ。
 原因はまもなく判明した。
 厳しいコスト目標を抱えていた開発チームは、最終試作で大幅に構造変更をするという賭けに出ていた。当然、時間的な余裕はない。そこで、本来は順を追って確認すべき3段階、つまり「設計での理論分析」「台上での評価試験」「実車でのデータ計測」を同時に進めていた。解析データの分析結果が出ない段階で試験走行を強行していたのだが、やがて過酷な条件下で実験を行ううちに、LCCが想定以上の高温になり、水やほこりの影響もあって異常を発生させたのだ。

 内藤が言った。
 「悔やんでも仕方ない。製品単体でデータを分析するだけでは、システム全体の状況が把握できないということだ。システム全体を把握できるシステム監視機能が必要だな」
 開発チームはシステムの状態を逐一確認して、様々な状態の変化をパソコンで監視するしくみを取り入れた。さらに、荷重制御の安定性を高めるためにばね荷重を増やす、ダストが入りにくい構造に変更する、ばね材料を変更するといった対策を矢継ぎ早に実施した。その間約2カ月――。
 こうして改良された試作は、国内はもとよりドイツやスペインへも運ばれ、実車テストが行われた。部品メーカーが欧州を舞台に大規模な実車走行テストを行うのは、きわめて異例のことである。国内でも豊頃・藤岡の両試験場と公道で、実車テストを繰り返した。
 「10万km突破!」の報告が次々と寄せられたのはまもなくだった。

 かくして02年10月、モーター式自動MTは待望のラインオフを迎えたのだった。

     実車走行テスト
 (上:欧州、下:豊頃試験場)

8/9