●組付けはまるで知恵の輪だ!

 「こりゃ、知恵の輪だな」
 小川工場品質担当・長谷部は、思わずそうつぶやいた。
 モーター式自動MTの基本設計が固まってくるのに合わせ、量産化の検討と生産体制の構築が始まったのだが、ここでも難題が持ち上がっていた。

 クラッチ機構の要となるLCCは、小川工場が担当した。形状が複雑なうえに高い要求精度が求められ、クラッチ本来の「切る/つなぐ」機能だけでなく「感知する」、「荷重を制御する」という機能が加わった重要な部分である。
 内藤の表現を借りれば、このLCCは「クラッチの概念を超えた、複雑な精密部品」だった。アジャスター機構もきわめて複雑で、従来10点程度だった部品点数が約2倍。それまで15mmのリベットが最小だったのに、モーター式自動MTでは1.5mmの微細なパーツもある。これは、容易に製造できるはずがない。

 これだけ部品点数が増え、機構が複雑だと本来は熟練工による組付けに頼ることになるのだが、生産技術担当の堀内はできればそれは避けたかった。
 「生産性を高め、コストを抑えるためにも、熟練工でなくても組付けできる生産ラインにすべきだ」
 すぐさま動いた。組付けが難しいと判断した作業では、設計とも相談しながら製品の寸法や形状の変更を依頼し、組付け性の改善をはかった。一方、人の技能に頼る作業では、組付け治具の改善を指示し、作業性を高める対策もとった。
 作業手順書にもこだわった。図を多用し、詳細な内容に仕上げた。それに基づく作業教育も徹底した。

 こうして、長谷部が「まるで知恵の輪だ」と嘆息したモーター式自動MTの量産化にめどをつけたのだった。

LCCの部品(ばらしたところ)

LCCの組付け

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