●小型化への壁

 ミッション(変速)部に通常のMTを使い、クラッチの断接およびMTのシフト&セレクト操作をモーター式駆動ユニットで行う――モーター式自動MTのしくみはこうだ。したがってMTやクラッチディスクなどは既存の部品が生かせる。しかし、新しく開発する駆動ユニット(ACT)はなんとしても小型・軽量化しなければならなかった。

 「最大の壁は小型化だな」
 そう内藤が思ったのには理由がある。
 クラッチディスクは使用年数が経つごとに摩り減って荷重変化が起きる。つまり、クラッチ操作に必要な力が増加していくのである。普通のMT車の場合、ドライバーがペダルの反発力に応じて加減(制御)しながら、「切る/つなぐ」操作を行っている。
 クラッチ操作をモーター駆動で行うモーター式自動MTでは、人間が自然に行っている「制御」ができないため、クラッチディスクが最も摩耗したときに対応できる性能のモーターを搭載しておく必要がある。モーターの性能が低いと摩耗が進んだときに力不足になり、クラッチ断接ができないケースが起こりうるからだ。しかし、初めから摩耗した時に合わせた能力のモーターを搭載すると、大型化してしまい、パワーも無駄になる。

 この問題をどう解決するか。
 開発陣の出した答えは、「小型のモーターでも安定してクラッチ操作ができる“荷重制御装置”の開発」だった。摩耗が進んでも、クラッチカバー内で荷重変化を一定に保つ装置である。これならモーターが小型化できる。
 「問題は、どうやって荷重を一定に保つかだな…」
 「摩耗の度合いをどう感知するかも大きなハードルだぞ」
 方向性が見えてほっとしたのもつかの間、この2つの課題を克服し、ロードコントロールカバー(LCC:荷重制御機構付クラッチカバー)の装置を設計するための新しい模索が始まった。

◇シフト&セレクト操作

  オートメーテッドマニュアル
  トランスミッション
  (モーター式自動MT)

モーター式駆動ユニット    

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