●目標を絶対にクリアするという気概が、新たな扉を開く

 かつては高級車向けが主流だった電動コラムは、2000年代に入りRV車にも需要が拡大。国内では02年末のプラドを皮切りに、翌03年1月にはハリアーが量産体制に入った。04年にはクラウン、クラウンマジェスタ、05年にはアリスト、ウィンダムなど。
 さらに海外での生産も展開された。03年8月には北米のアイシン・ドライブトレインで生産を開始、北米ハリアー向けは、すでに月産5,000〜7,000台にのぼっている。そして05年からは中国のアイシン天津車体部品でもクラウン向けの生産を始め、これで日本・北米・中国の世界三極生産体制が実現。低迷した時代からはもはや隔世の感がある。

 営業戦略を進めてきた営業部員が振り返る。
 「電動コラムなどの操舵・懸架系製品は開発規模が大きいために、成果を出すまでには数年単位での動きになる。一時は低調だった操舵・懸架系製品事業も、電動コラムという事業の柱ができ、今では勢いがついてきた。振り返ってみると、新型電動コラムで開発を一本化し、さらに生産を一本化するまでの96年から02年にかけては本当に厳しい時期だった。しかし、関係する開発、生産、販売の全メンバーが思いを一つにして、一枚岩で立ち向かえたことが今の成果につながった。この成功体験を次の飛躍に生かしたい」

 製品の機能は充実の一途をたどっている。
 最新型の電動コラムでは、チルト&テレスコ機能に加え、さらに快適性や安全性を高めた機能が付加された。ステアリングホイールの最適な位置を運転者ごとに記憶するメモリー機能、駐車時にハンドルをロックする盗難防止機能など。オートアウェイリターン機能は、キーを抜くとステアリングホイールが跳ね上がり、キーを差し込むと記憶した位置に自動で戻るもので、ドライバーの乗降性を向上させた。
 次々と進化を遂げる電動コラム。機能性、静粛性、価格面などで優れた同コラムへの、海外メーカーからの引き合いも少なくない。
 また05年8月からスタートしたトヨタ自動車の新しい販売チャネル「レクサス店」で販売される全車種に、アイシン製電動コラムが標準装備された。

 設計者に求められる心構えとは何だろうか、との問いに、開発リーダーはこう話す。
 「どんな製品の開発にも目標があって、時間や人員や予算の制約がある。重要なのは失敗を恐れず、不断のチャレンジを継続し、失敗からも何かを学ぶ姿勢。そして、そこから得た知見、経験をベースに課題解決策を見いだすのはもちろんだが、最後はどこまで技術屋として目標を達成しようとする執念があるかが目標達成のための鍵となる。危機感に触発された“絶対に目標をクリアする”という気概が、開発の原点――」
 大切なのは課題をクリアするためのつねに前向きな姿勢。そして優れた製品を世に出そうとする“気概”。それが開発の原動力なのだということだろう。



※文中の所属・役職は当時のものです。

電動コラムはプラドなどRV車にも
需要が拡大

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