●再び突きつけられた開発要件。
 スペースをめぐる数ミリの攻防

 どうすれば部品の干渉を回避することができるか。
 それには衝突時のコラム部品と周辺部品との動きを把握したうえで、衝突実験を行う必要がある。そのためにはまず実験の数値目標を定めなくてはいけない。
 操舵・懸架グループのメンバーがトヨタ自動車に派遣された。同社の実験室で衝突実験を繰り返し、ステアリングシャフト周辺のどの部品が、どんな壊れ方をするのかを把握して、周辺部品との干渉の分析にあたった。衝突安全と言っても前突、斜突、オフセット衝突とさまざまなケースがあり、その作業は膨大なものであった。
 もちろん、メンバー同士の情報交換は頻繁におこなわれた。
 99年4月になると、さらに厳しい開発要件がトヨタ自動車から示された。一つ目は、衝突時に膝障害を軽減するため、コラムカバー内の下側隙間を40mm以上確保すること。二つ目が、衝突時、ブレーキペダルが入り込んできてもいいようにコラムの車両前方へのストロークを確保するということである。両方とも難題だった。特に前者の場合、従来型の1.5倍もの隙間を確保する必要がある。

 これは、開発リーダーをはじめとする設計者にはあまりに高いハードルだった。ただでさえ狭いところに製品を搭載するため、少しでもスペースがほしい。しかし、衝突実験の担当者も引き下がるわけにはいかない。当然、やりとりは丁々発止となる。
 「この設計で搭載できないか」
 と開発リーダーが言えば、実験担当者は、
 「これではオフセット衝突時にブレーキペダルのブラケットに当たります。ダメですね」
 と妥協しない。
 「じゃあ、これはどうだ」
 と再び開発リーダーが言えば、
 「今度はパーキングブラケットが当たります」
 と待っていたかのような指摘。
こうした数ミリをめぐる攻防を続けながら、開発メンバーは計画図の完成度を高めていった。

衝突実験装置

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