●立ちはだかる厳しい開発要件と、
 トヨタ自動車との開発一本化

 「トヨタの先を行こう」
 開発チームが掲げたのはトヨタ自動車の内製部門に先んじることだった。新安全基準に定められた厳しい基準をトヨタ自動車に先がけてクリアしようというのである。
 一丸となって第1回目の構造図を作成し、トヨタ自動車へ持ち込んだ。しかし、その反応は、
 「製品に突起部があって、膝の安全性にマイナスだ。これでは基準をクリアできない」
 というものだった。
 さらに車両が衝突した際、運転者はエアバッグで衝撃を緩和されるが、同時にコラムが取付け部から離脱して、衝撃を和らげる働きをする。この時、仮に離脱したコラムの軌跡が周辺部品に干渉すると、人体に与える衝撃力は増大してしまう。衝突時、周辺部品に干渉せず、隙間を保ちながら、想定した範囲内にいかにコラムを納めるかを解決しなければならない。
 開発リーダーは悩んだ。
 「これまで蓄積してきた要素技術を存分に発揮し、多様な部品の構成をまとめる総合力が必要だ。これは大変なことだぞ」

 転機が訪れたのは開発に着手してまもなくのことだった。トヨタ自動車の幹部から、次のような声が寄せられたのだ。
 「新安全基準に適合させようとするアイシンの真剣な取組みを評価する。しかし、同じ製品開発をグループ内で競合しているのは非効率だ。トヨタとアイシンとが協力して、究極の電動コラムをつくってほしい」
 これまで長く続いていた競合状態を脱し、開発を一本化することで開発の無駄を省こうという意図である。ベースとなったのは当社が提案した構想だった。
 「これでつくろう。あとは車両レベルでの安全性の確保とコストだな。知恵を集めて頑張ってくれ」とのトヨタ自動車幹部の声を背に、ライバル同士が手を組んだ共同開発が始まった。

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