●初めての外装製品への挑戦。続いた水との闘い

 「本来ドアハンドルへの製品ニーズは、表面の美しい仕上がり精度や手触り感、強度などが主だが、スマートキーでは見栄え品質の確保に加え、機能と防水性の向上など、今までにない多くの項目が要求されるだろう」
 生産技術部・小林はそう考え、気持ちを奮い立たせた。なぜなら、生産を担当した半田電子工場では機能部品である電子部品の製造がほとんどで、外部環境の影響を受けやすくまた外観の見栄えを重視する外装製品はこれまで手がけたことがなかったからである。
 工程をつくりこむ段階になって、心配は現実のものとなった。水である。アンテナ、コンデンサー、ハーネスなど電気部品を内蔵するドアハンドルは、車外に位置するため常に風雨にさらされる。ドアハンドル内に水が入ると電子部品が接触不良や誤作動を起こしてしまうため、徹底した防水対策が不可欠なのだ。
 そこでアンテナ接合部はアンテナ組付け工程においてウレタン系のポッティング材を充填することで防水した。センサー電極部はアクリル系テープを使って接着し、防水性を高めた。しかし、このテープは両面テープのため粘着性が高く、作業者の手に付着するなど作業効率が非常に悪かった。そこで、剥離用テープを追加で製作したり、作業用治具を独自開発することで対処した。

 さらに、もう一つ課題があった。完成品の機能評価をいかに効率的に行うかである。製品は全数検査が基本である。そこで、電波の指向性や出力を効率的に計測できる専用検査装置を開発した。
 この専用検査装置では、アンテナの指向性と使われ方に合わせた製品機能と検査装置のマッチングをはかり、性能を正確に検査できるよう測定ポイントを工夫した。またセンサー性能に関しては、人が手で触れたときと同じ状態を模擬できるテストプレートを採用することで、検査に要する時間を1個あたり5分から約20秒へと短縮させ、検査効率を大幅にアップ。量産ラインでの迅速かつ正確な全数検査を可能にした。
 
 こうして、ごく狭いドアハンドル内にコンパクトに納まる製品を仕上げることができた。小林は思った。
 「電子系技術部はもちろん、車体系技術部、材料技術部、生産技術部などの連携と技術の融合の賜物だな」
 この間、緊急な設計情報を技術部門から生産部門へ連絡する「技術連絡書」の数は100枚以上にものぼっていた。

ポッティング
固定、絶縁、腐食保護などのため、ケースに樹脂を流し込んで中の部品を固めること。

ポッティング材を充填したところ

(気泡確認用に透明樹脂を使用。上:表面、下:裏面)

専用検査装置

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