●企業、技術、部門の垣根を越えたシステム開発に挑戦

 当社は96年、スマートキーシステムに先駆けて「パッシブエントリーシステム」を試作し、新製品展示会等でトヨタ自動車に提案してきた。しくみはオーナーがドアハンドルに触れた時点で照合を行い、ロック解除するというもの。従来からあるキーレスエントリー(ワイヤレス・リモコン機能)では車外の離れた場所からオーナーが自らキー操作(遠隔操作)しなければならないが、その点で当社のパッシブエントリーは一歩進んだキーシステムになっていた。

 当社が、97年11月から始まったスマートキーシステム開発にトヨタ自動車、デンソー、東海理化とともに参加することになったのは、そうした実績があったからである。新しいスマートキーシステムは、パッシブエントリーの技術を基本に、それをさらに進化させようというものだった。ドアハンドルにアンテナを内蔵して、オーナーが車両に近づいた時点で照合を終え、ドアハンドルに触れると瞬時にロック解除するのである。

 ところで、なぜドアハンドルにアンテナを内蔵する必要があるのか。理由は2つある。
 まず1つ目は通信エリアに関するもの。クルマに乗り込むとき、オーナーはドアハンドルに向かってくるため、これを中心にした通信エリアとすることが理想である。またこの位置に搭載することで、オーナーはキーを全く意識せず、ドアのロック解除からエンジン始動まで一連の動作を自然に行うことができる。
 2つ目は車種展開にあった。ドアパネル内などにアンテナを搭載すると、車種ごとに設置スペースを検討する必要が生じる。しかし内蔵型ならば、ドアハンドルを入れ替えるだけですみ、他車種への展開も容易になる。ちなみにベンツ製はドアパネル内にアンテナを搭載する構造。この点でライバルに差をつけることもできる。

 しかし、それまでにドアハンドル内部にアンテナやセンサーなど電子系の部品を組み込んだ例はないし、技術的にも未知の部分が多かった。従来のドアハンドル設計では強度、デザイン性、手触り感などをポイントにすればよかったが、今回のようにドアハンドル内のごく限られたスペースにアンテナ、センサー、スイッチ、ハーネス(電線)類を組み込むためには、メカ技術と電子技術を融合させる必要がある。成功すれば世界初だが、壁は厚く、そして高い。

 こうして、電子系、車体系、さらには生産技術の各分野に関わる技術者同士が意見と知恵を出し合い切磋琢磨する“格闘”の日々が始まった。

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