バーチャルカンパニー制による投資効率の改善

中西事業の収益性を高める上では、投資の効率性も重要であり、近年では、ROIC(投下資本利益率)といった指標も注目されています。投下資本を在庫と固定資産として御社のROICを計算した場合、トヨタグループの主要企業の中では若干低く、欧米のグローバルサプライヤーやメガサプライヤーだと約2倍近く高い企業があります。この背景には、分社化経営の良い面と悪い面の両方が混在していると思いますが、この課題をどう認識されて、どのようなグループ連携の姿を描いていますか。

三矢誠 氏

三矢事業全体のROICは約10%、加重平均資本コストは5%~6%であり、調達コストを上回るリターンは得られているものの、リターンをさらに向上できるよう取り組む必要があることは認識しています。今回、バーチャルカンパニー制(以下、VC制)を発足させたことにより、会社の枠を超えて、連結目線、VC目線で、ヒト、モノ、技術、ノウハウなど持っている資産の有効活用を進めるとともに、無駄なコスト、重複コストを解消することで、投下資本の抑制をめざしていきます。また、利益改善という点では、各社が持っている技術を統合し、高付加価値製品を迅速に生み出すことで利益改善していきたいと考えています。
パワートレインはMT、オートマチックトランスミッション(以下、AT)、ハイブリッドトランスミッションと製品が進化してきましたが、国内ではMTシェアが低い一方で、新興国ではMTが主流の地域があるなど、国や地域によってその進度に差があります。これまでアイシングループでは、多額の投資を必要とするパワートレイン事業において、MT、商用AT、ATをそれぞれ別の会社で行ってきたため、グループ全体の投資負担が重くなっていました。こうした状況をパワートレインVCで考えた場合、国内のMTや古いAT設備を新興国で活用することや、MT事業で持っている資産をATあるいは次世代製品へ転用することが可能になります。今まで個社目線ではできなかったことが、VC目線だとできるようになります。
また、車体事業の場合、アイシン精機、シロキ工業、アイシン辰栄の3社で一部事業が重複していました。今回のVC制に伴い、車体事業の整理・集約を図ります。
ドアフレーム、アウトサイドハンドル、シート部品など外装・機能部品については、コスト競争力の高いシロキ工業やアイシン辰栄に集約することで、スケールメリットを生かしコスト競争力をさらに高めるとともに、アイシン精機は、パワースライドドアやサンルーフといったシステム製品に特化することで、さらなる高付加価値製品を生み出していきます。それぞれの得意分野に資源を集中させることで、車体事業の収益性改善、ひいてはROICの改善を図ります。

中西今の成長戦略は非常に同感できます。ROICの比率が上昇するということは、成長に向けた投資余力も含めた本当の力、基礎力が上がっていることを意味するので、今後の取り組みに注目していきたいと思います。ただ、新たにVC制がスタートしても、一気にグループ全体が変わるものではないと思います。経営トップのめざす姿を従業員やお取引先などとも共有・理解し、それを実行に移していく。その仕組みとしてROICといったKPIをさらに明確にしていくことが求められるのではないでしょうか。

三矢ご指摘の点は、2017年の半ばをめどに、固定費や資産、投資などの取り組みガイドラインなどを策定し、各VCの戦略もそこに落とし込んでいく考えです。

中西 孝樹 氏
中西 孝樹 氏
(株)ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト
セルサイド(証券会社)、バイサイド(資産運用会社)の双方で、マネジメント、クオリティ・コントロール、パブリッシング・アナリストの経験を有する。1994年以来一貫して自動車業界の調査を担当し、米国Institutional Investor誌 自動車セクターランキングで2003年から2008年まで6年連続第1位、日経ヴェリタス人気アナリストランキング自動車・自動車部品部門で2003年から2008年まで6年連続第1位と不動の地位を保った。2011年にセルサイド復帰後、InstitutionalInvestor誌、日経ランキングともに自動車部門で2013年に第1位。「トヨタ対VW(フォルクスワーゲン)2020年の覇者をめざす最強企業」(日経新聞出版社)、「2020年の『勝ち組』自動車メーカー」(日経新聞出版社)などの著書多数。