本意見は、AISIN GROUP REPORT 2018のうち、環境分野について、関係者へのインタビューおよび関連施設の視察などに基づいてとりまとめたものです。本年度も、アイシン連結環境方針のもとで、環境分野での取り組みが着実に進められていることが示されています。

グループ全体の環境マネジメント体制が明確

昨年度まではグループ主要14社の環境担当役員によって方針決定されていた環境マネジメントについて、社長によって組織された新しい「アイシン連結環境委員会」を立ち上げ、トップマネジメントを確実に実行できる体制を立ち上げたことが大きな特徴です。

二酸化炭素排出量の削減をはじめとして、より一層の環境負荷低減を進めていくためには、個々の企業が従来からの延長上で生産工程での環境管理を進めるだけではなく、グループ全体として、限られた経営資源をどの部門にどう配分し、効率的・効果的な成果を生み出すかを検討しなければならない状況だと判断できます。その意味で、経営トップによる判断がより重要となります。

また、グローバルに環境マネジメントを推進していくためには、グループ各社の環境管理の知見や技術の共有化のグローバルな横展開が必要となりますが、「オールアイシン環境会議」のもとに活動している省エネルギー、環境保全、EMS、製品環境という4つの研究会が重要な役割を果たしていることがわかります。

2050年に向けての4つの環境軸である、ライフサイクルでのCO2「ゼロ」、環境負荷「ゼロ」、生物多様性保全の地域プログラム、グローバルな環境マネジメント評価体制の構築に向けて、上記研究会での活動成果に期待したいと思います。なお、自然共生社会の構築に向けた生物多様性地域プログラムの実施については複数の研究会にまたがる活動だと推測されますが、中心となって推進していく研究会を明確にしつつ、地域の自然特性に応じた取り組みがグローバルに展開されていくことを期待しています。

「第6次アイシン連結環境取組プラン」の着実な進展

2017年度は、2020年度を目標年次として2016年度からスタートした第6次環境取組プランの2年目に当たります。定量的目標値が設定されている生産活動・物流活動における売上高当たりCO2排出量、廃棄物およびVOCの売上高当たり排出量については、すでに2020年度目標をほぼ達成しています。また、インドネシアおよびブラジルでも環境委員会が立ち上がり、グローバルなEMS体制の構築がさらに進んだことも評価できます。

さらに、「Aqueduct(※1)」を用いた渇水リスクに対する評価システムの開発が進み、リスクの高い拠点が選定される段階に達したことも特筆できます。次年度以降、2020年度目標が具体的に設定されることに期待したいと思います。

今後、定量的に削減目標が設定されている4つの指標については、海外の拠点における排出原単位の定量的な把握と目標設定に向けた取り組みが加速されることも期待しています。

なお、これらの目標については、2016年度の段階ですでに達成しているものが多いため、さらに一段高い目標設定に向けた検討が進むことを願っています。

2030年CO2総排出量低減に向けた取り組みが進展

2030年までにCO2総排出量の低減を目指す取り組みとして、太陽光発電や地中熱の利用,輸送トラックへのBDF(※2)導入などが進められています。さらに、今年度現地を視察させていただいたアイシン精機の西尾ダイカスト工場南棟では、建屋の設計や生産工程での革新的な技術導入によってCO2排出量の大幅な削減を実現するとともに、働く場として安全で快適な環境も生み出していることが高く評価できます。

革新的な技術開発に基づいて、第6次アイシン連結環境取組プランで示されている2050年までにライフサイクルでのCO2「ゼロ」化をめざす取り組みが今後とも積極的に進められることに期待しています。

廃棄物の再資源化や適正処理が進展

アイシン高丘では、もともと産業廃棄物として処理することを余儀なくされていた鋳物廃砂を、中子の砂として再生し、2017年度からは構内で再利用することにより、産業廃棄物の大幅な削減を図ることができた点が高く評価できます。また,アイシングループ全体で高濃度PCB機器の適正な処理が計画的に進められています。

今後とも、先進事例の共有などを通じて、比較的規制が厳しくない海外の生産拠点を含めて、廃棄物の発生削減や再資源化をグローバルに進められるように期待しています。

自然との共生の取り組みが進行

2016年度から整備がはじめられたアイシン軽金属 有磯工場の「有磯ふれあいパーク」では、地域の原風景である 放生津潟 ほうじょうづがた (※3)の復元をめざすビオトープの整備や、絶滅危惧種のキタノメダカの放流などが始まっています。地域の在来種による自然再生は、生物多様性の保全の観点からみて非常に重要な取り組みです。今後、この取り組みを自社ウェブサイトでもっと積極的に広報されてはどうでしょうか。また、福井県中池見湿地での里山里地再生の活動や、アイシン精機 半田工場(愛知県)のアイシンエコトピア、各地での外来生物駆除などの取り組みに多くの方が参加できるようなしくみづくりに期待したいと思います。

おわりに

今年度は、アイシン精機 西尾ダイカスト工場を訪問し、南棟の革新的な製造現場を視察させていただくとともに、排水処理センターをご案内いただきました。一定の処理困難性を伴う排水に対して、活性炭吸着をはじめとした高度な排水処理を行い、公共用水域の水質保全に寄与されている点がよく理解できました。また、処理施設の運転管理を外部に委託するのではなく、自社で技術維持も含めて担当されている点は、他の工場での取り組みと同様に、会社としてきちんと責任を持つというアイシングループらしさが象徴的に現れていると感じました。

今後とも、グループ全体でよりよい環境マネジメントを進めていただきたいと思います。

  1. ※1 Aqueduct…「世界資源研究所(WRI)」が公表している水リスク(物理的な水ストレス、水の質、水資源に関する法規制リスク、レピュテーションリスクなどを含む)を世界地図に表したツール。
  2. ※2 BDF…生物由来の物から作られるディーゼルエンジン用の燃料のこと。アイシングループでは社員食堂で使用した食用油を回収し、精製して燃料にしている。
  3. ※3 放生津潟 ほうじょうづがた …富山県射水市の北部砂丘内側(現在の富山新港)にあった潟湖。
千頭 聡

日本福祉大学
教授 千頭 聡

執行役員(地域連携政策)
地域連携推進機構長
まちづくり研究センター長
知多半島総合研究所長
大学院国際社会開発研究科
国際福祉開発学部