本意見は、AISIN GROUP REPORT 2017のうち、環境分野について、関係者へのインタビューおよび関連施設の視察などに基づいてとりまとめたものです。本年度も、アイシン連結環境方針のもとで、環境分野での取り組みが着実に進められていることが示されています。

4つの「進化」に向けた取組体制が明確

2050年に向けて、ライフサイクルでのCO2「ゼロ」、環境負荷「ゼロ」、生物多様性のための地域プログラムの実施、グローバルなマネジメント評価体制の確立という4つの環境軸に沿った目標が明確に示されるとともに、アイシン連結環境委員会を核としたグループ全体での体制が体系的に組まれていることが評価できます。特に、海外の連結対象会社を含めたグローバルな体制ができていること、省エネルギー研究会など4つの研究会が、グループ全体の横断的な組織としてエネルギーや廃棄物の削減をはじめとした環境分野全体を網羅した活動を展開していることが特筆できます。国による法規制や社会慣習の違いはありますが、2050年の目標を実現していくためには、グローバルにグループ全体として取り組むことが必須ですので、今後のさらなる展開に期待したいと思います。

第6次アイシン連結環境取組プランに基づく重点活動の顕著な進化

2020年度を目標年次として2016年度から新たに第6次環境取組プランがスタートしています。全19項目のうち、定量的目標値が設定されている生産および物流活動における売上高当り温室効果ガス排出量、廃棄物およびVOCの売上高当り排出量については、いずれも2020年度目標をすでに達成していることが特筆されます。また、CO2排出量の大幅な削減をめざすアイシンクリーンエネルギー工場の確立に向けた検討や、水ストレスに対する評価も、先進的な取り組みとして高く評価できます。さらに、共通基盤分野で、2020年のグローバルな環境人材育成の考え方を共有化していることも特筆すべき事項だと考えます。

今後、2030年あるいは2050年の長期的な目標達成のために、次の中期的目標設定を先取りしたような、より積極的な取り組みに期待したいと思います。

2030年に向けたシナリオづくり

第6次プランで示されている2050年までにライフサイクルでのCO2「ゼロ」化をめざすうえでは、目標に向かってのシナリオを確実に描くことと、それを支える革新的な技術開発を進めることが、車の両輪ともいうべき重要な事項です。2016年度に主要4社が、技術革新やエネルギー排出量削減に加えて再生可能エネルギーの創出を含むシナリオを作成したことは、その重要な一歩だと評価できます。また、国内外での先進的な改善事例を積極的に横展開していく取り組みに期待したいと思います。

水および廃棄物に関するグローバルな実態評価がスタート

World Resources Instituteの水に関わるリスク評価の手法である「Aqueduct」を用いて生産拠点での総合的な水リスクを評価したり、国内外の生産会社における廃棄物の実態調査を行ったりするなど、グローバルに負荷削減をめざしていくために必要なデータの整備が進んできました。今後、これらのデータの解析結果をもとに、地域の状況に応じた効果的な削減方法の開発や選定が進められていくことを期待しています。

環境リスクの予知活動が進む

海外での環境事故を未然に防ぐための環境KYTシートを活用した事例集づくりが進められたことも2016年度の一つの特徴です。また、タイやインド地区でも環境実務者による連絡会が始まり、環境異常などの再発防止に取り組んでいます。事故や異常の予知は、国内の生産現場ではすでに従来から積極的に取り組まれてきた活動ですが、発展途上地域の生産現場では、文化風習の違いなどもあって、必ずしも十分には取り組まれてこなかった活動だと言えます。技術面での対応、ヒューマンエラーの削減など、多方面にわたる取り組みが必要ですが、海外での運用とその成果を期待しています。

環境に関わるコンクールにおける受賞

衣浦工場の排気リサイクルシステムが「省エネルギーセンター会長賞」、エネファームtype Sが「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しました。おめでとうございます。WEBサイトに紹介されているその他の事例もふくめて、製品開発や製造過程など、様々な場面で環境負荷の低減に貢献する活動がさらに発展することを願っています。

おわりに

今年度は、アイシン精機小川工場を訪問し、製造現場における取り組みを視察させていただくとともに、廃棄物の分別と再資源化を担う「お宝センター」を見学しました。「混ぜればゴミ、分別すればお宝になる」との考えから、廃棄物処理認定者の教育プログラムを立ち上げ、その修了者のみが持ち込める運用ルールの下で40種類近くの分別を行っています。担当者が地道に努力をされているがゆえに、静脈部分の最後の出口がきちんと管理されていることがよくわかります。

2016年度に「ビオトープ大賞」を受賞した半田工場のアイシンエコトピアも同様ですが、むやみに作業を外部化せずに、従業員がきちんと責任を持つという、アイシングループらしさが象徴的に表れていると感じました。

今後とも、グループ全体として2050年に向かっての大きな進化を続けていただきたいと思います。

学校法人日本福祉大学
執行役員 教授
千頭 聡

千頭 聡