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バーチャルカンパニープレジデント座談会

情報・電子VC

植中 私たちの業務には、カーナビゲーションを中心としたTier1(カーメーカーへの1次仕入先)と、オートマチックトランスミッション用のECUのようなTier2(構成部品などを手掛ける2次仕入先)の役割があります。Tier1ではナビの進化にどう対応するかが課題ですが、我々の強みは車両情報を持っていることです。アイシン・エィ・ダブリュではもともと高精度な地図情報を手掛けています。それを情報機器とうまく掛け合わせて、自動車メーカーとも一緒になって新たな価値をつくっていきたいと考えています。また、BtoB向けの新たなサービスの提供もできるのではないかと模索しています。Tier2では、これまで以上に高機能、高品質、それから低コストなものが求められ、システムとの連携が重要になります。技術開発はもちろん、仕事のやり方の変革にも取り組んでいく考えです。つまり、VC制の中ではTier1.5のような役割で上手に連携を取りながら進めていきたいと考えています。

伊原 半導体をはじめこの領域では日本勢は苦戦していますが、この分野でアイシングループは競合に立ち向かっていけるのでしょうか。

植中 アイシングループの強みであるメカ系、アクチュエーター系と情報・電子を組み合わせることで差別化が可能です。そこに資源を投入して、勝ち残っていきたいと考えています。

伊原 今年4月に台場開発センターを開設しましたが、人材の採用についてはどのように考えていますか。

植中 一朝一夕で人材育成はできませんが、かといって成長をのんびりと待っている時間の余裕もないのが現状です。優秀な人材を中途採用するなどして、力を付けていく必要があると考えています。

車体VC プレジデント 西川 昌宏
車体VC プレジデント 西川 昌宏
情報・電子VC プレジデント 植中 裕史
情報・電子VC プレジデント 植中 裕史

グループ本社

三矢 これまで数十年、アイシングループでは各社ごとに仕事を行ってきましたが、今回のVC制を機に目線を変えていく必要があります。1つ目は、個社最適から連結最適へ。2つ目は、これまでの仕事の仕方は本当に価値を生んでいるのか。この2つの目線をもって改革に取り組んでいきたいと思っています。第1ステップとして、経営管理部門では経理システムを標準化するなどプラットフォームを共通化していきます。次にAIやロボティクスを活用し、定型業務や単純な分析、判断業務を機械化していく。効率化によって得られた資源を、より高度な戦略業務やマネジメントを強化したい海外拠点へ注力していきます。また、機能部門ではアイシングループとしてのマスの力を使って、共同調達や共同物流、基礎研究や開発など一緒に行ったほうがいいものを見つけて改善に取り組んでいきたいと思っています。

伊原 経営管理部門では、人事や経理、広報などを統合したり、仕組みを統一化することは分かりやすいですね。一方で機能部門も各事業VCの中に、開発、生産、製品、調達、営業の全部があり、グループ本社内にもある。グループ本社の役割と事業VCの役割を明確にしなければまた同じことが起こりかねないですが、そのあたりについてはどう考えていますか。

三矢 今まさに、それぞれの事業VCと機能部門について話し合いをしています。まずは一緒に行ったほうがいいところを挙げて、整理していく段取りになると思います。

伊原 調達で言えば、主要な部品は各事業VCが買う。一方で資材や電子用品のような一括で買った方がいい物はグループ本社が買うといった仕組みは非常に分かりやすいので、ぜひ生産技術や開発の面でもうまく分類できるよう進めてください。

VC制での具体的な取り組み

VC制での具体的な取り組み

VC制がスタートしてからの感触と今後への期待

パワートレインVC

尾﨑 VC制については、4月の発足式の場で従業員の皆さんに思いを伝えたときから、手応えを感じていました。今後事業VCとしてより一体感が醸成されていくと思います。パワートレイン領域はお客様からの引き合いが多く、大変ありがたい状況です。この状況を将来につなげ、グループが一丸となって成長できるように頑張ります。

走行安全VC

小木曽 走行安全VCとしても、いい手応えを感じています。グループ間の垣根を取って会話することは、とても価値のあることであり、大きな効果を生むと思います。走行安全領域はライバル会社も多く、各社の垣根を取り外して本音で議論しなければ勝つことはできません。VC制の仲間と本音でぶつかり、各人の個性を活かしながら、強い情熱をもって取り組んでいきます。

車体VC

西川 VC制により、会社間で人の交流が進んでいます。こういう関係に自然となれるような形が強い体制だと思いますので、これからも交流の輪を広げていきたいと思います。また、現在、3社で課題に取り組んでいますが、この目的は効率化で生まれるリソーセスを活用し、仕事量を増やすことです。VC制をうまく活かすことで商品力を強化し、売上を伸ばすことにしっかり取り組んでいきます。

情報・電子VC

植中 VC制によっていい意味で雰囲気が変わってきた印象があります。これまでにもグループ連携はありましたが、VC制になって明らかに違うのは、「これがやりたい」という提案がどんどん出てくるようになったことです。すでに取り組むべきテーマが92ほど出てきており、これらの結果を一日でも早く出すことによって「次はこれをやろう」という新たな提案も生まれてくる。こういった好循環を生み出していきたいと思っています。

グループ本社 三矢 誠
グループ本社 三矢 誠

グループ本社

三矢 グループ本社としては、2月くらいから各社と話を始めて、時間的に厳しかったこともあり、初めはさまざまな意見が出ましたが、我々の思いを一つひとつ丁寧に話していくことで理解が深まってきたと感じています。「やってよかった」という事例をつくり上げ、自然に「もっとやろう」という、いい循環をつくっていきたいと考えています。実は5年ほど前にもグループ連携活動を行ったことがありました。その時に集まった役員のバッジは全部がバラバラで「今日はバッジを外して、アイシングループとして話をするぞ」と前置きをしてから会議を始めました。今はバッジは一つ、前置きは必要ありません。アイシンの将来に向けて、グループ一丸となって前へ進んでいきたいと思います。

伊原 今回のVC制は、まさにアイシングループの将来の競争力確保のために行う大きな仕掛けです。先行きがとても不透明な時代に、従来の延長線上にある仕事の進め方では競争力を確保するのは難しいと思います。今回のVC制を通して、仕事のやり方を変えながら競争力を高めてくいことが最大の目的です。トライ&エラーを繰り返しながら進化を続け、ステークホルダーの皆様の期待にも応えるべく、アイシングループ一丸となって競争力強化のために進んでいきたいと思います。

VC制がスタートしてからの感触と今後への期待

VC制がスタートしてからの感触と今後への期待

近年、大企業を中心に事業部制からカンパニー制へと移行するケースが多く見られる。

例えばトヨタ自動車は2016年より、「コンパクトカー」「ミッドサイズビークル」など製品群ごとにカンパニーを創設する体制へと移行した。これは中短期の商品計画や製品企画は各カンパニーが担うことで意思決定を迅速化し、開発から製造まで一体となったクルマ作りを意図したものだ。

一方で今回アイシングループが導入した“バーチャルカンパニー(VC)”制は、少々意味合いが異なるものだ。電動化、自動運転など、自動車業界には約100年の歴史においてかつてないほどの急激な変化の波が押し寄せている。アイシン精機の伊原社長はVC制導入の理由を「グループとしての一体感と変化の対応力を強化することで、競争力を高めていく」と述べており、「パワートレインVC」「走行安全VC」「車体VC」「情報・電子VC」と4つの事業軸でVCが創設されている。一見するといわゆる一般的なカンパニー制にも思えるが、その実は“バーチャル”の言葉があるように、会社に見立てた“仮想の”カンパニーだ。

そこで求められるのは、既存の会社に依存しない、新たな分野で起業を目指すような“ベンチャー”マインドと言えるものかもしれない。成功しているベンチャーの起業家たちが口をそろえて言うのが、誰かが考えた問題を解くのではなく、社会にあるまだ誰も取り組んでいない課題や問題を自ら見つけ出し、それを解き明かしていくことにやりがいを感じているということだ。そしてその課題や問題が大きければ大きいほど多くの人々にサービスを提供することが可能になり、企業価値もあがっていく。いまやベンチャー企業が創業からわずか数年で世界のトップ企業にまで成長した例など枚挙に暇がないのはご存知のとおりだ。

このVC対談内でも情報・電子VCの植中プレジデントが「VC制になって明らかに違うのは、“これがやりたい”という提案がどんどん出てくるようになったこと」と話しているが、まさにそこがスタート地点と言えるものだろう。

近い将来VCから“バーチャル”の文字がなくなるのか、はたまた新たなVCの登場もあるのか、このアイシングループの新たな取り組みに注目していきたい。