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スペシャル対談「自動バレー駐車」

自動化に向けてクルマとインフラの協調を

土井教授

都市計画としての課題は、もはやお金のかかるインフラは必要ないと思っている人が多いことです。人口減少および経済の低成長が続く中では、積極的に投資していこうという発想は生まれない。また自動車の開発サイドには、自動車万能主義で、クルマだけでやろうと考えている人も多い。実際、クルマだけで全部をやろうとすれば1台あたりのコストは1500万円をくだらないという試算もあるくらいです。

石黒

我々はなにがなんでもクルマだけで自動運転を実現化することは目指していません。自動車とインフラをうまく連携させていきたい。必要性を問いてきちんとビジネスとして成立させた上で社会の課題解決につなげていきたいと思っています。

土井教授

インフラと協調していくという考えが素晴らしいですよね。都市的な要素でいえば、道路しかりインフラというのは、長い時間をかけて劣化していきます。それを維持していくのはコストでしかない。ですから国や企業も積極的にはなれないし、技術者もモチベーションがそれほど高くない。だけど自動運転をより正確に快適にサポートするインフラに、たとえばビークルと都市空間をコネクティッドにするものというイメージを加えると、インフラをただ維持、補修するだけじゃなくてより高度化していく、そのために投資をする、技術開発をする意欲が湧いてくると思うんです。

石黒

まさにIoTと言われるように、すべてのものが連携することによって、より高い性能が発揮できるようになるのかなと思いますね。

土井教授

どうも単一の技術だけでいろんなものを完成させようという発想が日本の企業などには根強くあるように思います。存在するものすべからく利用して、使うという発想がITSにとっては重要で、まずそのためのプラットフォームを作っていく必要がありますね。

土井健司 教授、石黒 博

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先ほど先生がおっしゃった、都市に人を集め、駐車場などを減らして有効活用し、街を作り変えていく過程で、自動バレー駐車をはじめとする自動運転以外に大事な要素はどのようなものでしょうか。

土井教授

自動化が影響を受けるものの1つに、人がどれくらいのスピードを求めるのかということがあります。いま日本の都市において問題なのは、市街地、特に住宅地での走行速度が速すぎるということです。ゾーン30という、生活道路における交通安全対策の一つとして上限30km/h に制限されている区間がありますが、先ほど述べた拠点内の移動に関しては、すべてそれこそ20km/h 以下にするくらいじゃなければいけない。それも自動化技術があれば、あっという間に普及します。クルマには何よりも守るべき優先順位は人だと学習させれば事故もなくなります。スピードを遅くすべきところは徹底的に抑制する、そしてコンパクトな道路空間、駐車スペースで街を構成していく。こういった考えをPSC(プライオリティ・スピード・コンパクト)と言いますが、これからの安全な社会に必要な思考方法だと思います。東京では、すでにファーストネスからスローネスへ、という価値転換がおこっています。それは高齢化の度合いにもよりますが、65歳を超えると人はスローネスを受け入れるようになると言われています。

石黒

高齢者の多い地域であればそれも受け入れやすいのかと思いますが、いろんな年代の人たちがいるコミュニティで、どうやって折り合いをつけていくのがいいと思われますか?

2020年初頭には実用化し、自動走行をビジネスへ

土井教授

先ほどあげた3つある移動のうち、都市間、拠点間に関しては、速く移動したい人はどんどんいけるようにする。自動運転、安全性能の進化も含めてクルマがそういう性能を持つようになっていくと思いますね。一方で拠点内の移動はどんな年齢の人であってもゾーン30を受け入れなければいけないというかたちがいいのだろうと思います。いま2020年のオリンピックに向けていろんなものが急ピッチで整備されていますが、石黒さんとしては、やはりその頃にはレベル4を実現できるイメージはあるのでしょうか?

石黒

そうですね、2020年代前半には、小規模でもいいので始めていきたいと思っています。経産省と国交省による「自動走行ビジネス検討会」というものがあって、自動運転をビジネスにしていくためにはどうすればいいのかカーメーカーやサプライヤー、駐車場事業者などとも手を組んで考えるプロジェクトが立ち上がっています。そこで2020年初頭に実用化できるものとして選ばれたのが、自動バレー駐車と隊列走行です。我々は日本の企業として、ぜひ世界に先駆けてレベル4を実現したいと思っています。

土井教授

ビジネスとしては、例えば専用のバレー駐車場を備えた共同住宅は資産価値が高くなるといった状況も考えられます。マンションデベロッパーなどとも手を組んだ展開もあると思いますね。

石黒

なるほど、ありがとうございます。我々が作った機能が付いたクルマを買ってくれた人たちだけでなく、それが社会の課題を解決するようなものになってくれると、とてもうれしいですね。

自動バレー駐車

藤野 太一
Interview
藤野 太一 Taichi Fujino
大学卒業後、自動車誌『カーセンサー』、『カーセンサーエッジ』の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。自動車専門誌、一般誌をはじめ、自動車関連の分野をはじめとしたビジネスマンを取材する機会も多く『日経ビジネス』『日経トップリーダー』『日経デジタルマーケティング』などにも寄稿する。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属