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スペシャル対談「自動バレー駐車」

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ちなみにこうした駐車支援技術におけるレベル3とは、具体的にどういうものなのでしょうか。

レベル4「自動バレー駐車」の実現を目指す

石黒

実は我々は駐車支援に関しては、レベル3よりも先にレベル4を目指しています。「自動バレー駐車」といいますが、ホテルに着いてボーイさんにクルマを預けると勝手に駐車してくれて、出かけたい時にはフロントまで持ってきてくれる。それを自動化するイメージです。いま取り組んでいる自動バレー駐車は、駐車場という限られたスペース、インフラをコントロールできる状況下で、クルマの弱いところをインフラがカバーしながらレベル4を実現するというものです。

土井教授

やはり完全自動運転の実現は自動車単体ではなく、都市計画をはじめとするインフラの整備が必要になりますよね。ところで石黒さんが駐車支援の開発に特化しているのはどういった意図があるのですか?

石黒

駐車が苦手だというユーザーからの声がとてもたくさんありました。クルマの運転が好きだという人でも駐車が好きだという人はあまりいません。実は私もその1人です(笑)。しかし、駐車は自動車を利用するためには必ず必要な操作です。そこで弊社では、2003年に世界初の駐車支援システム、インテリジェントパーキングアシストを量産車のプリウスに搭載しています。

土井教授

2003年からですか、早いですねえ。それはどういったものだったんでしょうか。

石黒

カメラで駐車場にある白線を検知して、その白線に対してどのようにハンドルを切ればいいのかをコンピュータが計算をして、ハンドル操作を自動で行うものでした。ただ、当初は少し使い勝手に難があって、どうしても設定に時間がかかってしまうため、ドライバーもいらいらして使ってもらえなくなってしまうことがありました。そこで、画像認識を入れて操作を簡素化したり、後ろのカメラだけで白線を検知していたものを、サイドミラーにあるカメラや超音波センサーを使うことで前進誘導機能も入れるなどして、これまで使い勝手を向上させてきました。

土井教授

最新のものは、どれくらい進化しているのですか?

石黒

先ほどのインテリジェントパーキングアシストがバージョン2になっているのですが、駐車区画線認識に加えて、車両間の空間を認識することが可能で、白線がなくても駐車できるようになっています。

土井健司 教授

都市計画の観点で移動には3種類がある

土井教授

なるほど。駐車支援システムもレベル2に進化しているということですね。そして次にレベル4を目指すと。私自身の研究テーマである都市計画の観点から自動運転をみると、距離の違いなどから移動には3種類があると思っています。1つ目は大きな都市と都市のあいだを移動する行為、高速道路などがそれに該当します。2つ目が大きな都市の中で核となる拠点間の移動、幹線道路などがそれにあたります。そして3つ目が拠点内の移動。この拠点内の移動で一番重要なのは、ラスト1マイル(物流などにおける配送先までの最終工程、約1.6kmのこと)、もしくはファースト1マイルと呼ばれるところで、自動運転はそれぞれに特化していくのがいいのではないかと思っています。この3つの空間レベルを一気通貫する自動運転技術となると、まだまだ数十年はかかるんじゃないかと思いますね。

石黒

我々の研究開発というのは、まさにそのラスト1マイルの最後の部分に特化しているわけです。自動バレー駐車ができるようになれば、その範囲を広げてやればおのずとラスト1マイルの自動化ができるようになるんじゃないかと思います。

土井教授

まさに、そうだと思います。いま日本は高齢化、過疎化を迎えて人口が減少していく中、国の重要施策として都市をコンパクト化していこうという動きがあります。例えば名古屋でも郊外に住んでいる人達を都心に集めなければいけないと言われています。

石黒

北海道の夕張市などでは聞いたことがありましたが、名古屋もなんですね。

土井教授

そうなんです。そうすると自分の駐車場を確保してクルマを所有して移動するという生活ではなく、シェアリングが進みます。カーシェアやライドシェアをはじめ、駐車場をシェアリングするもの、それから道路空間をシェアする、シェアードスペースという概念が生まれ、自動車をとりまくすべての空間がシェアリングの対象になっていく。世界的に見ても、車庫法があって車庫がなければクルマが買えないなんていう国は日本だけです。欧州では一定の規制を設けてそのうえで路上駐車するのがあたり前です。

石黒

たしかに、ヨーロッパでは路上駐車が合法化されています。そしてあちらの人たちは本当にみんな縦列駐車がうまいですよね。

土井教授

都心に過度にクルマを流入させないための対策としては、パーク&ライドやロードプラインシングで数を規制するなどの仕組みを取り入れています。日本ではそういうことを本格的にやってこなかったため、街中にもたくさん駐車場がある。上空から日本の都市を見ると、3割が道路、2−3割が駐車場で、すなわちクルマのための空間が6割も占めているわけです。それをどうやって上手に人のための空間に変えていくのかということが、これからの日本の課題なのです。都市にある駐車場の数を減らし、いかに効率良くクルマを出し入れするのかがこれからの街作りにとって大事なことです。

目標は駐車スペースを20%削減、事故ゼロへ

石黒

まさに、その課題解決に対して我々の自動バレー駐車はマッチしているものです。そして現在は、より狭いところに停められる技術を追求しています。1台のクルマを停めるのに、今の公共駐車場では幅はおおよそ2.5m〜3m必要ですが、それを20%削減するだけでも、単純計算ですが100台の駐車場に120台が駐められるようになる。我々は以前から画像認識、それから超音波センサーで障害物を認識する技術を進化させてきたこともあり、狭いところに駐車することが得意ですし、自動バレー駐車によって事故もなくなります。

土井教授

なるほど、狭い空間を上手に使う技術も開発されているということですね。

石黒

自動運転というと車線幅が3.5m くらいある高速道路を速く走る技術が注目されがちですが、我々の得意分野は駐車のシーンで、緻密な制御のもとセンチメートルの単位で縫うような操作を実現することです。他社の技術とは一線を画していると自負していますし、そこに活路を見出していきたいですね。

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レベル4を実現するためには、クルマと駐車場にはどういった条件が求められるのでしょうか?

石黒

レベル4になると、システム側が安全を担保する必要があります。ですから、従来のような誰でも自由に出入りできるような駐車場では難しいです。またクルマ側だけでやろうとすると、非常に高度なシステムが必要で、高価格帯のクルマであればそれでもいいと思いますが、我々としては普及モデルでやりたい。ですから現在普及しているカメラや超音波センサーの技術を使って安価にできるシステムで、あとは駐車場側を工夫して、できるだけレベル4を早期にかつ安価に実現したいと考えています。

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ということは、普通のクルマと混在したかたちでレベル4の実現は難しいということでしょうか。

石黒

おそらく2020年代初頭の段階では、専用駐車場、もしくは専用エリアを設けるのが現実的かなと思っています。