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スペシャル対談 将来の日本の街を変える「自動バレー駐車」システム

スペシャル対談 大阪大学大学院工学研究科 土井健司教授 × アイシン精機走行安全制御技術部 石黒 博 将来の日本の街を変える「自動バレー駐車」システム

近年、自動車の自動運転が大きな注目を浴びている。2016年には日本政府として交通事故の年間死者数を2020年までに2500人以下に減らす計画を発表。これにより大型車に衝突を回避する自動ブレーキの設置が義務付けられるなど、自動運転技術の開発に拍車がかかることになる。現在、アイシン精機では将来技術の柱の一つである「自動バレー駐車」の開発に注力している。果たしてこの駐車支援技術とは具体的にどのようなものなのか、そしてこの技術が近い将来の街にどのような影響を与えるのか。都市交通計画の専門家である大阪大学大学院の土井健司教授と、アイシン精機の自動バレー駐車システムの開発者である石黒博がこれからの自動運転技術とそれがもたらす都市のあり方について意見を交わした。

土井健司 教授
土井健司 教授 Kenji Doi
大阪大学大学院工学研究科 地球総合工学専攻 交通・地域計画学領域
名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻修了(博士後期課程)
東京工業大学助教授、香川大学工学部教授を経て、2012年10月から現職。
専門は都市交通計画、モビリティコンセプト、都市デザイン
石黒博
石黒博 Hiroshi Ishiguro
アイシン精機株式会社 走行安全制御技術部 先行開発グループ
大学/工学部・電子工学科卒
2004年に中途入社。ITS 技術部配属。ドライバーモニターシステムのソフトウェア開発を担当。2012年ITS・走行システム開発部(現走行安全制御技術部)に異動。駐車支援システムの先行開発を担当。現在に至る。

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まず、いま自動運転という言葉をよく耳にしますが、そもそも自動運転の定義とはどういうものなのか、石黒さんからお話いただけますか。

石黒

自動運転とは現在人間が行っている様々な運転操作をシステムが代わって行うものです。おそらく一般的なユーザーの方がその言葉から思い浮かべるのは、ナビをセットして自宅を出たら何もしなくても目的地に着いて、また戻ってこられるというものだと思いますが、まだ現実の世界ではそのレベルには到達していません。

土井教授

最近では例えばアクセル操作とブレーキ操作を自動で行うACC(アダプティブクルーズコントロール)や、ハンドル操作をしてくれるレーンキープなども、一般的になってきましたよね。

石黒

それらは“運転支援”システムという位置づけです。自動運転レベルでいうとレベル2の状態です。いま自動運転の定義はレベル1〜5までありまして、レベル1は1つの操作だけが自動化された状態で、自動ブレーキなどがそれにあたります。これにアクセルやハンドル操作など、複数の操作を自動で行うものがレベル2。レベル2ではあくまでも責任はドライバーにあります。レベル3になると、通常時はシステム側が安全確認も含めてすべてやります。ただ100%正しく動作するシステムというものは存在しませんので、緊急時などはドライバーに運転操作を戻すのがレベル3。レベル4ではあるシーンや状態におけるすべての操作に対してシステムが責任を負います。いわゆる自動運転システムがこれです。ただ、現在は高速道路のあるIC からIC までの区間など、使うケースが限定されています。先ほどお話した、家を出て目的地に着いて駐車をしてという運転のすべてが自動化された状態はレベル5といいます。ただこれは私たちが生きているうちに実現化できるかどうかはちょっとわからないですね(笑)

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先日、アウディが発表した新型A8では世界で初めてレベル3の自動運転技術が搭載されていると話題になりました。技術者としてはどう思われますか?

石黒

技術としてはレベル3を実現化しているようですが、現実的には国によって法律が異なるので、実際にどこまで現実世界で使用できるのかはこれから検証が必要です。ただ、レベル3ということは、もし事故が起きればメーカーが責任をもつということですから、我々も含めて日本にはそこまでの責任を負う度胸のあるメーカーはまだないかもしれません。そういう意味では先を行っているなと思いますね。

土井教授

レベル3に完全に到達するには、技術面だけでなく法整備も必要というわけですね。

石黒博

アイシンは駐車支援技術に的を絞って開発

石黒

弊社では一連の自動運転の中でも、安全運転を支援するためのドライバーモニターシステムと駐車支援システムに的を絞って開発を進めています。レベル3ということに関していえば、先ほど、自動運転中は基本的にはシステムが責任を負い、緊急時などはドライバーに運転を戻すというお話をしましたが、そのときにドライバーがどんな状態にあるのかを検知する技術が必要になります。顔の向きや視線、まぶたが開いているかどうかなどでドライバーの状況を判断する、弊社ではドライバーモニターシステムと呼んでいますが、それを2006年に世界で初めて実用化し、現在も技術開発を進めています。

土井教授

もし仮にですが、ドライバーが眠っている、もしくは急病になった場合はどうするのでしょうか。

石黒

まさにいまその研究開発を進めていまして、近い将来にはドライバーが運転不能だと認識すると、クルマを安全な場所まで自動で退避して停車する機能が搭載されるでしょう。

土井教授

それは凄いですね。

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駐車支援に関しては、新型BMW7シリーズやメルセデス・ベンツSクラスが車外からリモコンキーやスマートフォンを使って遠隔操作で駐車できるシステムを実用化しています。ドライバーが車内にいる必要がないため、狭い場所にも駐車しやすいというものですが、これは技術レベルとしてはどのようなものなのでしょうか。

石黒

自動運転レベルとしてはレベル2に該当するものです。ドライバーが車内にいるか車外にいるかの違いはありますが、あくまで操作の責任はドライバーにあります。実は我々も2013年のITS 世界会議で同様のシステムをデモンストレーションしています。ただ、ドイツメーカーは高価格帯のモデルではありますが、セキュリティなどの面をクリアして量産化している点はすごいなと思います。我々としても技術的には問題ないので、量産化の課題を解決し、できるだけ一般的なモデルに搭載できればと思います。