AISIN GROUP
AISIN VIEW

グループトップ対談

石原

アートとしても、従来から三つの課題を抱えていました。その一つが拠点の問題です。生産がグローバルに拡大していく中で、アートは中国、インドネシア、タイに生産拠点を構えて販売を拡大してきました。シェアも順調に伸ばしてきたのですが、ここにきて調達傾向の変化が見られるようになりました。
従来は個別最適調達が主だったため、アートは自動車メーカーの生産拠点がある場所でピストンを生産し、提供する方法をとってきました。しかし、全体最適調達が主となった今、世界ナンバーワンのピストンメーカーをめざすためには、欧米に生産拠点をもつことが喫緊の課題だと思っています。しかし、成熟した市場を持つ欧米に後進メーカーとして出ていく難しさも十分に認識しています。特に、人的なリソース、さらには投資に必要となる費用という大きな課題が目の前に立ちはだかっていました。
二つめは技術的な側面です。今、パワートレイン系は非常に多様化してきています。ダウンサイジングを支える過給テクノロジーの向上が求められるとともに、ハイブリッドやPHVなど自動車の選択肢が増えると、人々が要求する性能も変わってきます。特に軽量化、低フリクション化、さらには熱効率アップなどに対する要求が厳しくなると想定しています。
そうした状況において、アートが世界中のニーズを把握し、なおかつ潜在ニーズまで考慮した提案を行うためには相当な情報収集力、営業力、そして開発力が必要になります。これは、1社単独では非常に難しいことです。
三つ目は、新商品の創出という課題です。内燃機関の需要は2040年にピークを迎えるという分析があります。このことは、ピストン事業一本の専門メーカーとして事業を展開してきた私たちの将来を考えると存亡の問題。内燃機関以外の第二の商品を遅かれ早かれ用意していかないと生き残っていけません。
こういった三つの側面からアートのこれからを考え、アイシンとの経営統合に踏み切りました。

統合後の両社の役割とは

— 足りないものは補完し、確実なシナジー効果を —

伊原

統合した後、ピストンについてはアートに集約したいと考えています。つまり、開発、制御、国内生産については、すべてアートにおまかせします。また、海外展開については、アートはアメリカに生産拠点がないため、アイシンとどのように分担するかは今後検討すべき課題です。しかし、時間がかかってもいいので、グローバル市場も含めたすべてをアートに集約していく考えは変わりません。
その上でアイシンは、ウォーターポンプやオイルポンプをはじめ商品構成が燃焼機関全体に及ぶメリットを活かし、エンジンへの将来的なニーズを見据えながら新たな技術・商品開発に注力すべきだと考えています。

石原社長(アート金属工業)

石原

アートにはピストンの専門メーカーとしてこれまでに積み重ねてきた生産技術があります。その上で、アイシンの広範囲に及ぶ高い技術力、そして強力なグローバルネットワークを共有し、活用することで早くシナジー効果を発揮し、競争力を上げていきたいと考えています。それがアートに課せられた役割だと思っています。
具体的には、アイシンの高速ピストンラインをベースに、アートの得意分野である小回りの利く内製設備を融合した生産ライン、例えば「アイン・アート・シナジー・ライン(仮称)」の構築を検討しています。
また、鋳造についても両社の方案の良いところを活かし、従来以上の生産性を実現するために取り組みがスタートし、既に効果を出しつつあります。

伊原

アイシンから出向社員を送っていますが、人的交流はもちろん、それによって技術の融合が加速すれば大きな意義があると思っています。

石原

そうですね。材料開発の分野や吸排気系の機能部品分野にも視野を広げ、シナジー効果をさらにあげていきたいですね。

伊原

アイシンは今、中核となる13社がアイシングループを形成し、それぞれの事業活動を行っています。アートは14社目として最も新しいグループ企業となりますが、コアメンバーとして積極的に事業展開してほしいと思っています。そのためのサポートは全力で行っていきます。

石原

ありがとうございます。2017年はアートが創業して100周年という記念すべき年です。そうしたタイミングでアイシングループの一員になることができ、絶好のスタートを切ることができました。

伊原

これから最も大切なことは、ピストンをはじめパワートレイン事業において両社がいかに競争力を発揮していくかということです。そのために個人の力、そして組織力を磨き続け、いっしょに世界ナンバーワンをめざしていきたいと思います。